抄録
2系統のWistar Han系ラット(Slc:WistarHannover/Rcc、以下Rcc系、Crj:WI(Glx/BRL/Han)、以下Han系)を5週齢から109週齢までの104週間飼育し、そのデータを収集した。飼育期間を通じ、体重推移及び摂餌量推移を観察し、定期的に雌雄各10匹を用いて血液学的検査及び病理学的検査を行った。得られたデータは、過去に収集したCrl:CD(SD)系ラット(以下SD系)およびF344/DuCrj系ラット(以下F344系)の成績と比較した。
雄では、Rcc系の生存率が他3系統よりも高く推移し、Han系は、SD系より高く、F344系よりも低く推移した。104週(109週齢)時の生存率は、Rcc系で92%、F344系で82%、Han系で69%、SD系で54%であった。一方雌では、Han系が4系統の中で最も高く推移し、Rcc系は、SD系よりも高く,F344系よりも低く推移した.104週(109週齢)時の生存率は,Han系で80%,F344系で70%,Rcc系で66%,SD系で39%であった.
飼育期間中の体重および摂餌量は、Rcc系およびHan系の雌雄ともに、概ねSD系とF344系の中間を推移した。
Rcc系の雌雄に共通の特徴的な肉眼的観察所見としては、リンパ節の肥大が雄で74%、雌で58%と高頻度に認められた。また、雄では心臓の白色斑点、総胆管の拡張、肝臓の褐色斑点が高頻度に認められたが、雌でのこれらの発生率は低く、代わりに下垂体の肥大、肺の白色斑点、皮下の塊(乳腺)が高頻度に認められた。
Han系では、肺の白色斑点および総胆管の内腔拡張が雌雄に共通して高頻度に認められた。その他、雄では肝臓の白色斑点、腎臓の表面粗ぞうが、雌では、下垂体の肥大、皮下の塊(乳腺)、肝臓の赤色斑点が高頻度に認められた。また、Rcc系、Han系ともに、下垂体の肥大が雌でそれぞれ60%および37%と高頻度に認められたのに対し、雄では両系統ともに、その発現頻度は低位であった。