日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-21
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優秀研究発表 ポスター
ラット胎盤におけるカドミウムの病理組織学的分布
*山岸 由和古川 賢小林 由幸池本 徳孝杉山 晶彦
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抄録
【目的】カドミウム(Cd)を投与した妊娠ラットの胎盤中における分布について病理組織検査用のスライド標本にてLA-ICP-MSを用いて経時的に検索した。【材料及び方法】試験にはWistar Hannover妊娠ラット20匹を供試した。塩化カドミウムは生理食塩水に溶解し、0及び0.04mmol/kg(Cd投与群)の用量にて妊娠18日に皮下投与した。投与1、2、3、6及び24時間後に剖検し、胎盤及び胎児を摘出し、重量測定後、胎盤を常法に従いパラフィン包埋ブロックを作製し、HE染色を施し、組織病理学検査を実施した。無染色のスライド標本にてLA-ICP-MSを用いて胎盤内のカドミウムを分析した。【結果】試験期間を通して母動物の死亡は認められなかった。一方、胎児死亡はCd投与群において投与6時間後より認められた。組織病理学検査では、Cd投与群において投与2及び3時間後で迷路層の栄養膜細胞は膨化し、空胞変性を示した。これら細胞は主として合胞性栄養膜細胞であった。また、母体血液洞内の赤血球は減少していた。投与6時間後で迷路層においてうっ血及び出血し、栄養膜細胞は壊死、消失し、これにより栄養膜中隔は菲薄していた。投与24時間後には迷路層の正常構造は消失し血腫状を示した。基底層、脱落膜及び間膜腺では変化は認められなかった。LA-ICP-MS測定では、Cd投与群において投与1時間後より試験期間を通してカドミウムが検出され、その検出量は投与24時間後が最も多かった。カドミウムの胎盤における分布はいずれの時期においても、迷路層に局在し、その他の胎盤組織ではカドミウムはほとんど検出されなかった。【結論】カドミウム投与ラット胎盤についてのスライド標本にてLA-ICP-MSを用いてその分布を検索したところ、病変発現部位とカドミウムの分布が一致した。LA-ICP-MS はスライド標本にてカドミウムなどの重金属の分布を把握できる可能性があり、病変の要因解明や重金属の経路把握の研究において有益なツールであると考えられた。
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© 2014 日本毒性学会
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