日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-225
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創薬早期の候補化合物における変異原性陽性事例の低減の試み
*林 利彰野村 俊治
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抄録
創薬早期の毒性スクリーニングにおいて,開発候補化合物の変異原性の有無の確認は重要な項目の一つである。弊社においては,簡易型Ames試験(Bioluminescent Salmonella reverse mutation assay:Biolum Ames)を導入し,その検出感度および処理能力の向上を図ってきた。また,当該試験に供するバルク中に夾雑する不純物に関する検討は重要課題であり,創薬早期においても不純物の安全性評価および管理の重要性が認識されつつある。すなわち,創薬早期における変異原性陽性の原因が候補化合物によるものか,あるいは不純物によるものかを明らかにする事は必須事項となってきている。このような背景の中,変異原性陽性と判定された事例について高純度のバルクと陽性反応を示したバルクを用いて比較したところ,それらの変異原性のうちいくつかは不純物により引き起こされていた。この結果を踏まえて,我々は創薬に関わる合成,分析および毒性部門で遺伝毒性試験(変異原性試験を含む)に用いるバルクの合成から遺伝毒性試験の実施に至るプロセスを見直した。さらに,遺伝毒性試験に供することを前提としたバルクの合成ルートの確認,純度に関する項目等を含んだチェックリストを導入し,研究者間のコミュニケーション向上とチェック項目の確認のため部署間で共有した。その結果,プロセス構築前は,3.5%~4.2%であった年間の変異原性陽性率に対し,導入後は陽性反応が認められなくなった。結論として,簡易型Ames試験導入に合わせて多方面から検討するプロセスの構築とチェックリストの導入により,試験実施前に変異原性試験に供するバルク製造に際して留意すべきポイントが関係部署間で共有されたことにより,変異原性陽性率を低下させ,ひいては施設内での創薬早期の遺伝毒性試験に向けての意識改革にもつながったものと考える。
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© 2014 日本毒性学会
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