日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-64
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優秀研究発表 ポスター
in vitro試験/in silico systemを組み合わせた、皮膚感作性評価体系の構築
*齋藤 和智竹之内 修西條 拓宮澤 正明坂口 斉
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抄録

[背景、目的] 感作誘導期の重要な現象に着目した幾つかの代替法が開発されている。各代替法は、local lymph node assay(LLNA)やヒトでの感作性に対して、高い(80%以上)予測性を有することが示されているが、単一の代替法で感作性の有無を完全に予測することは困難である。我々はこれまでに、樹状細胞の活性化に着目したhuman Cell Line Activation Test (h-CLAT)、タンパク質と感作性物質の結合に着目したDirect Peptide Reactivity Assay (DPRA)、in silico systemであるDEREKを組み合わせた評価体系を構築し、LLNAに対する予測精度が向上することを示してきた1)。本検討では、上記3手法による評価体系(Integrated Testing Strategy、Tiered approach)を用いて、ヒトでの感作性の有無および感作強度に対する予測性を検証した。
[方法] 本研究では、ヒトでの無影響濃度や症例頻度などの情報を基に、感作性の有無および強度が報告済み2)の計68物質を解析に用いた。なお、ヒトでの感作強度予測では、強度分類を3段階(strong、weak、non-sensitizing)として解析した。h-CLATについては、THP-1細胞に被験物質を24時間曝露した後にフローサイトメーターによって、細胞表面タンパク質CD86およびCD54の発現量を測定した。DPRAでは、システイン、リジンを含むモデルペプチドと被験物質を混合し、24時間後にHPLCを用いて、モデルペプチドの減少率を測定した。DEREKでは、被験物質の化学構造を代入しアラートの有無を確認した。
[結果、考察] 68物質のヒトでの感作性の有無に対する一致率は、h-CLAT:85%、DPRA:75%、およびDEREK:82%であった。次に、各代替法の評価結果をスコア化し、総スコアから感作性を予測するIntegrated Testing Strategy (以下、ITS)、h-CLATとDPRAを段階的に組み合わせたTiered approach(以下、Tiered)の予測精度を検証した結果、一致率はITS:93%およびTiered:88%となり、いずれも試験法単独時に比べ良好な値を示した。また、各評価体系において偽陰性となった物質は、coumarin(LLNAで陰性)のみであった。さらに、ヒトにおける感作性強度に関しては、ITS:72%およびTiered:68%と良好な値を示した。本結果から、2つの評価体系のいずれにおいても、ヒトにおける感作性の有無および強度を精度良く予測できる可能性が示唆された。
[謝辞]本研究は、日本化粧品工業連合会 動物実験代替専門委員会 感作性代替法ワーキンググループ 2012年度共同研究の成果の一部を引用させていただいております。この場を借りて御礼申し上げます。
[参考文献] 1) 竹之内ら, 2012. 日本動物実験代替法学会第25回大会. 2) Basketter et al., 2013. ACDS.

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© 2014 日本毒性学会
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