抄録
臨床副作用と非臨床毒性所見との相関性の解析は毒性試験の意義を明らかにし、予測困難な副作用を特定することが可能であることから、医薬品のヒトにおける安全性を考える上で重要である。近年、新薬におけるバイオ医薬品の割合は増加傾向にある。モノクローナル抗体は標的分子が明確であり、副作用の多くは標的分子を介した薬理作用に関連したものと想定されていたが、我々が実施した副作用と毒性所見の相関性解析では低分子医薬品と比較してバイオ医薬品における相関性は特に低いことが示された(J Toxicol Sci, 38: 581-598, 2013)。本研究ではその原因を明らかにするため、バイオ医薬品を対象に副作用と毒性所見との相関性を詳細に検討した。
平成11~23年に新有効成分含有医薬品として本邦で承認されたバイオ医薬品22剤(モノクローナル抗体並びに受容体とのFc融合タンパク質)について、発現頻度が5%以上の副作用を対象として毒性所見との一致性を解析した。対象薬剤の薬理作用標的はTNFαおよびVEGFが最も多く、それ以外にEGFR、C5、CCR4、CD20、CD25、CD80/CD86、HER2、IgE、IL-12/IL-23、IL-1β、IL-6R、RANKLおよびTPORが含まれた。
抽出された副作用(総数364)のうち、薬理作用(標的分子に依存する主たる薬理作用)に関連すると考えられる副作用が約1/4、薬理作用に関連しないと考えられる副作用が約1/2を占めた。副作用の約6%は投与部位反応に関連したものであった。副作用に一致する毒性所見は、薬理作用に関連した副作用では約1/4に認められたのに対し、薬理作用に関連しないと考えられる副作用では殆ど認められず、明確な差異があった。