日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-90
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胆汁酸排泄輸送体の阻害による胆汁酸の蓄積と肝細胞毒性に関わる胆汁酸分子種の同定
*大泉 久美子関根 秀一深貝 明子伊藤 晃成
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抄録
【背景・目的】胆汁うっ滞型薬剤誘発性肝障害は、胆汁酸の細胞外への排泄に関わる輸送体が薬物により阻害され、肝細胞内に蓄積することで引き起こされる。ヒト血清中には15種類以上の胆汁酸が存在するが、肝細胞内蓄積に伴う毒性発現に寄与する胆汁酸の同定には至っていない。そこで本研究ではサンドイッチ培養ラット肝細胞(rSCH)を用いて、胆汁酸排泄輸送体の阻害剤であるCyclosporinA(CsA)による各胆汁酸の細胞内蓄積と細胞毒性の増悪を評価することで、毒性発現に寄与する胆汁酸の同定とそれら胆汁酸の細胞外排泄に関わる胆管側(Bile salt export pump: Bsep)及び血管側 (Multidrug resistance associated protein 3/4: Mrp3/4)排泄輸送体の関与を明らかにすることを目的とした。【方法】当研究室での予備検討より、本研究に用いるCsA濃度を、胆管側排泄を阻害する10 µM、血管側も阻害する50 µMとした。rSCHに各濃度のCsA及び12種類の各胆汁酸(ヒト血清中濃度の30~1600倍)を24時間曝露し、細胞外に漏出したLDHを測定した。【結果・考察】12種類の胆汁酸のうちCsA 10 µM曝露時に毒性の増強がみられたものは、CDCA,DCA,GDCAの3種類であり、CsA 50 µM曝露では、これらに加えGCA,GCDCA,TLCAにおいて毒性の増強がみられた。一方でrSCHにおけるCsA曝露による肝細胞内の胆汁酸蓄積量は、検討した胆汁酸についてCsA濃度依存的な増加(1.5~14.7倍)がみられたことから、胆汁酸排泄輸送体阻害時の胆汁酸蓄積による肝細胞毒性には、CDCA,DCA,GDCAの寄与が大きいことが示唆された。また、CsA 50 µM曝露によりGCA,GCDCA,TLCAにおいて毒性の発現が見られることから、BsepだけでなくMrp3/4阻害もこれら胆汁酸の細胞内蓄積による毒性に寄与していることが示された。本研究結果は胆汁酸依存的毒性評価系による臨床毒性予測精度の改善や、臨床における胆汁うっ滞型薬剤誘発性肝障害発現のメカニズムを解明する上で有用な情報となることが期待される。
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© 2014 日本毒性学会
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