日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: S10-5
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シンポジウム 10 ナノマテリアルによる毒性とその安全性評価
ナノマテリアルの吸入毒性評価の迅速化と効率化に向けて
*菅野 純高橋 祐次高木 篤也広瀬 明彦今井田 克己津田 洋幸
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抄録
工業的ナノマテリアル(以下NM)については、その産業応用の急進展に対応し、有害性評価法を早期に確立する必要がある。マイクロメータ長の多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の中皮腫誘発能については、アスベスト及び人工的繊維状代替物の知見から予測される毒性発現メカニズムにより、腹腔内投与試験系による評価を進めた。しかし一般的には新規NMの、特に粒子のサイズや形状等のナノ化に起因する生体影響の毒性情報は極めて乏しい。このような状況においては、未知の毒性を扱う立場から、ヒトの暴露経路に即した動物実験によりハザード及びメカニズム同定、用量作用関係を明らかにし、ヒトに対する毒性と用量相関性の推定を行うという基本的な手順を取る事が有効である。重要な暴露経路である吸入については、従来、エアロゾル発生には検体毎の装置の開発あるいは工夫が必要であり、多大な時間と費用を要することが知られている。このため簡便法として、気管内投与等が多く用いられてきた。しかし、NMは凝集し易く、ヒトが吸入すると想定される分散状態と異なり、惹起される肺病変の質が全身暴露吸入試験と異なるとの指摘がされてきた。当研究部では、これらの諸問題を解決すべくMWCNTを例にとり、その凝集体・凝固体を除去し単繊維成分のみを高度に分散した乾燥検体を得る方法(Taquann法)、及びそれを全身吸入暴露するためにエアロゾル化するカートリッジ直噴式ダスト発生装置と小型暴露チャンバーを独自開発した。マウスを用いた実験では、単離線維が細気管支領域から胸膜直下の肺胞域まで到達し病変を誘発、また、一部が胸腔に達し、壁側胸膜面に中皮腫発がんを示唆する顕微鏡的病変を誘発することを確認した。本システムは廉価であり、各種NM検体の分散に適用可能なことが見込まれる事から、新規NMの吸入毒性評価の迅速化・効率化に貢献する事が期待される。
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© 2014 日本毒性学会
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