日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: S14-5
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シンポジウム 14 トキシコゲノミクスの活用例と今後の展開
マイクロRNAの各種毒性マーカーとしての応用
*南 圭一
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抄録
トキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクト(TGP2)では,毒性オミクス解析を行う一方で,各種臓器の毒性バイオマーカーとして期待されるmiRNAにも注目した.本検討では,ラットの全身の臓器を採取し,miRNAの発現分布データを取得した.そこから様々な組織の毒性バイオマーカーとして利用できる可能性のあるmiRNAの探索を行い,その結果を腎障害ラットモデルにて検証した.
まず,雄性SDラット(N=3)について,通常の解剖で採取可能な組織を全て採取した.消化管や脳などは一部解剖学的に分割し,最終的には55種類の部位についてmiRNAアレイ解析を行った.全サンプルを用いた主成分分析の結果,miRNAの発現パターンは組織の種類(神経,消化管,筋肉など)によって分類される傾向があり,同一組織間のばらつきも小さかった.次に,各組織について特異的な発現を示すmiRNAを,統計学的手法を用いて抽出した.その結果,腎臓,肝臓,膵臓,神経組織,消化管,下垂体など様々な臓器において特異的な発現を示すmiRNAを見出した.更に,このmiRNA組織分布データを用い,腎臓に特異性の高いmiRNAを抽出した.これらのmiRNAは,シスプラチン投与腎障害ラットモデルの尿中及び血漿中で高く検出された.一方で,腎臓では発現していないmiRNAの増加は検出されなかったことから,これらのmiRNAは腎障害を特異的に検出できるmiRNAであることが示唆された.
主要なmiRNAの多くは,動物種間でも発現が保存されていることから,今回の詳細なmiRNA発現分布データは,様々な組織における外挿性の高い毒性マーカー探索に有用と考えられる.
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© 2014 日本毒性学会
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