日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: S16-1
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シンポジウム 16 食品中の化学物質による肝肥大の発現機序と毒性学的意義: 現状・課題・展望
はじめに
*梅村 隆志
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抄録
 げっ歯類を用いた毒性試験において、肝肥大は化学物質の投与によりしばしば観察される変化であるが、本変化が適応反応か毒性影響かは長年議論されてきた。化学物質のリスク評価において、肝障害マーカー(ALT, ALP, AST, γ-GTP)値の有意な増加や肝細胞壊死など病理組織学的変化を伴う場合の肝肥大は「毒性影響」であると捉えるが、これら肝障害を示唆する変化が認められなかった場合の肝肥大は「適応反応」と判断するべきである。しかし、食品安全委員会における実際のリスク評価では、肝障害の有無にかかわらず、肝重量の増加および肝肥大が認められた場合、「毒性影響」としている。また、短期間投与で肝肥大を、長期間投与で肝腫瘍を誘発する非遺伝毒性肝発がん物質(例えばPhenobarbital (PB))について、肝肥大が肝発がん過程の非常に早い段階で見られる変化であるため、肝肥大を肝発がん過程の“early key event”であるとする考え方がある。このように、肝肥大は様々な捉え方をされているため、肝肥大の毒性学的意義を理解することは、科学的知見に基づいたリスク評価を遂行する上で重要である。
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© 2014 日本毒性学会
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