日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: S8-3
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シンポジウム 8 実験動物福祉および実験動物モデルの新たな展開:国際動向を探る
機関による自主管理体制と透明性確保への取り組み
*池田 卓也
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抄録

 実験動物に関連する法令等は、平成17年に初めて3Rsが明記されるなど抜本的に改定された。また同時に文部科学省、厚生労働省、農林水産省がそれぞれ動物実験基本指針を制定し、日本学術会議が「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」を策定した。これらにより、我が国においても実験動物福祉の向上と、動物実験に関する自主管理を進めるための基盤が整備された。また昨年は「動物の愛護及び管理に関する法律」が改正され、「実験動物の飼養及び保管に並びに苦痛の軽減に関する基準(飼養保管等基準)」等も改正された。
 このような中で、各機関は法令を遵守して機関内規定を策定し、動物実験委員会を設立し、実験動物福祉の向上に努めると伴に自主管理を進めてきた。一方、実験動物関係者の一部からは、諸外国と比較して日本の実験動物福祉は遅れているとの批判が未だにある。しかし、実験動物を飼養し動物実験を行っている現場レベルで、その対応が欧米に比較して遅れているかと言うと、その批判は必ずしも適切ではないと考える。しかしながら、自主管理の透明性という観点からは未だ不十分な点があるのは事実である。
 昨年改正された「飼養保管等基準」には、管理者の責務として自己点検とその結果の公表、第三者による検証が追加された。この追加を受けるまでもなく、多くの機関は自主的に自己点検およびそれぞれの立場で第三者検証を受けその結果を公表している。このような実験動物の飼養と保管、動物実験の自主管理体制の検証を通じた透明性の確保に対する取り組みは、着々と進みつつある。しかしながら個別に見ると、形に囚われ形骸化している、本来あるべき動物福祉の本質を見失っているような現実も無くはない。このような事例も含め紹介し、実験動物を使用する機関が抱える問題点等を明らかにしたうえで、それぞれの機関において自主管理の実効性の向上を考えたい。

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