日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: W6-3
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ワークショップ 6 複合型毒性試験の実施に関する現場でのQ&A
イメージング装置を用いた霊長類研究
*韓 秀哲
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抄録
近年、動物倫理についての認識が広がり、3R (Reduction、Replacement、Refinement) に基づき、実験動物の使用、動物実験の実施が厳しく制限されるようになっている。特に欧州では、化粧品開発および承認申請で動物実験を禁止しており、実験動物としてイヌやサルのような人間の伴侶動物や人間と似て知的能力が高い動物の使用ができなくなった。このような背景を受け、動物実験に変わる代替毒性法 (replacement) の開発は急速に進んでいるものの、毒性試験すべてに対する代替法は確立されていない。また、医薬品などの承認申請において、安全性を評価する上で動物実験結果が必要であり、最低限の動物数を使用 (reduction) して苦痛を軽減すること (refinement) などの対応が重要となっている。
そこで、動物数の最低限の使用および苦痛を軽減する方法として、霊長類におけるイメージ装置の活用について紹介する。霊長類は、人間と遺伝的に最も類似した種で、毒性試験に適しているが絶滅危機動物に資源の確保や飼育などが難しく、価格も高価であり、毒性試験の遂行には様々な困難がある。イメージ装置を利用した毒性試験や薬効試験は、毒性や病態の進行の様子を動物の犠牲なしに確認でき、試験の持続的な進行や完了などの時期を適切に判断できるものと期待されるとともに、動物福祉にも叶う動物実験のモデルになる。さらに、動物を犠牲にすることなく標的臓器 (target organ) を確認できる長所があり、不要な動物の犠牲と使用を防ぐ重要な方法となる。最近、我々はコンピュータ断層撮影 (Computed tomography、CT) の使用により、霊長類での定量的評価を行う標準型モデルを構築する研究を実施しており、これにより肺疾患の重症度の評価と肺機能検査 (pulmonary function test) の客観的な診断に活用できることを期待している。また、老人性疾患や成人病などに関する研究を向けて、長期間のプロジェクトを計画しており、こうしたCT研究結果は、磁気共鳴画像法 (Magnetic resonance imaging、 MRI) との組み合わせにより、身体のすべての臓器はもちろん、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中、脳梗塞などのような脳疾患モデルの製作などにも良い研究のツールになる可能性があるものと期待している。
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© 2014 日本毒性学会
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