日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: W8-4
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ワークショップ 8 医薬品の催不整脈作用のトランスレーショナルリサーチ
非臨床in vivo評価の臨床への橋渡しにおける現状と課題
*田保 充康小松 竜一
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抄録
昨年7月のCSRC-HESI-FDA会議においてS7Bの改訂に関する提案が発表され,評価のエンドポイントをQT延長作用から催不整脈作用に変更するとともに,新たなリスク評価法として,ヒトiPS/ES細胞由来心筋細胞を用いたin vitro評価と,複数のヒトイオンチャネルへの反応性から不整脈リスクを予測するin silico評価が提案され,実験動物を用いたin vivo評価については必ずしも推奨されなかった。Torsades de Points発生のベースとなるQT延長作用は,生体レベルでの様々な要因(自律神経系,電解質異常,性差,徐脈など)の影響を受ける。現状のin vitroin silicoではその危険因子の影響を正確に模倣し,未知薬剤の生体レベルでの反応を正確に評価する段階には至っていないと考えられ,現在の科学レベルではin vivoによるリスク評価も重要と考えられる。
in vivo評価のトランスレーショナル研究の現状として,QT延長作用についてはprobabilistic解析法を用いた評価が注目されており,非臨床でQT延長評価に使用される多くの実験動物やヒトにおいて高精度なQT延長評価が示され,非臨床からヒトまでの一貫した評価が可能である。また,催不整脈作用に関しては,完全房室ブロック動物を用いて実際の不整脈発生をエンドポイントとした研究が行われ,臨床結果との高い相関性が示されている。催不整脈の指標としては,再分極過程の空間的ばらつきと時間的ばらつきが有用と考えられており,特に心筋再分極時間の一拍毎の変動指標であるshort term variabilityの有用性が報告されてきている。
本発表では,QT延長作用の検出も含め,催不整脈リスク評価の臨床へのトランスレーションの観点から現状の到達時点について紹介し,今後のin vivoアプローチの課題と目標について議論したい。
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© 2014 日本毒性学会
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