日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: W9-1
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ワークショップ 9 臨床第Ⅰ相試験を担保する安全域の考え方
安全域の考え方:その多様性と考慮点
*高崎 渉
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抄録
 医薬品の研究開発において安全域をどう考えるかは、毒性の質やヒトへの外挿性も含め多面的な要素がある。対象とする疾患により患者のBenefit/Riskバランスも多様であり、例えば、がん領域においては他疾患に比べ安全域が狭いことは一般的に許容される。新規作用メカニズムあるいは未知ターゲットに挑戦するFirst-in-class化合物の開発においては、より慎重な考え方が必要となる場合もある。また、研究開発ステージが進捗することにより非臨床安全性データの位置付けも変わり、蓄積する臨床データに基づく動物からヒトへの外挿性の検証も可能となり、より確度の高い安全域に関する議論が成立するようになる。こうした多様性が、安全域の考え方を普遍的、一般的なものにすることを困難にしている。
 こうした多様性を考慮し、患者の満足するBenefit/Riskバランスを実現するため、種々の考慮点がある。毒性の質としては、ターゲット臓器や発現する毒性の重篤度・回復性に着目する必要があり、また、毒性がオンターゲットであるか否かも考慮される。臨床試験での患者のリスク軽減のためのSafety Biomarkerが存在し、安全性のMonitorabilityが担保されているか否かも重要である。さらに、Translatabilityをどう考察するかは、非臨床薬理試験結果のヒトへの外挿性の確からしさが問われ、Model & Simulationによる臨床での曝露や薬効予測と連動する必要がある。
 本ワークショップでは、安全域に関する多様性をBenefit/Riskバランスの観点から考察し、臨床第I相試験を担保する安全域の考え方を取り上げ、考慮すべき点を掘り下げる。
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© 2014 日本毒性学会
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