日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-163
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一般演題 ポスター
gpt deltaマウスを用いたアクリルアミドの生殖細胞遺伝子突然変異の解析
*萩尾 宗一郎小川 いづみ阿部 正義林 清吾辻 菜穂黒田 雄介古川 賢八木 孝司本間 正充増村 健一
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抄録

【背景・目的】アクリルアミド(AA)は神経毒性や雄性生殖器に対する毒性および遺伝毒性を持つことが知られており、IARCにおいてグループ2A(人に対しておそらく発がん性がある)に分類されている化合物である。AAが雄性生殖器に対する毒性を持つことから、生殖細胞に対する遺伝毒性が懸念されるため、本研究ではgpt deltaマウスを用いて、精巣および精子における遺伝子突然変異試験を実施した。また、28日間AAの曝露を受けた精原細胞より分化した精子の評価を行うために、最終投与3日後の採材に加え、マウスの精子の成熟期間である49日間の休薬期間を設定した群を設け、結果の比較を行った。
【方法】8週齢雄のC57BL/6 gpt deltaマウスにAAを7.5、15、30 mg/kg/dayで28日間経口投与し、最終投与の3日後及び49日後の精巣(全群)及び精子(溶媒対照群及び30 mg/kg群)を用いてgptアッセイを実施した。また、得られた全ての変異体についてgpt遺伝子の変異スペクトラム解析を行った。
【結果・考察】gptアッセイの結果、精巣では採材時期に関わらず30mg/kg群でgpt突然変異頻度(MF)の有意な増加が認められた。一方、精子では30mg/kg群の最終投与3日後のみでgpt MFが有意に増加した。変異スペクトラム解析を実施したところ、精子の30mg/kg群の最終投与3日後でG:C から T:Aへのトランスバージョンの増加が認められた。
本研究の結果、最終投与49日後に採材した精子のMFが増加しなかったことから、AAは精原細胞に対して変異原性を及ぼさないことが示唆された。一方、最終投与3日後に採材した精子のMFが増加したことから、精母細胞以降のステージでAAの曝露を受けることで突然変異が誘発されたことが示唆された。

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