日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-164
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一般演題 ポスター
末梢血を用いたPig-a遺伝子突然変異試験に対するエリスロポエチンによる造血亢進の影響
*真田 尚和大隅 友香中村 美智米澤 豊入山 昌美
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抄録

Pig-a遺伝子は様々な細胞における膜タンパク質の保持に必須であり、赤血球ではPig-a遺伝子変異により膜タンパク質のCD59が消失することが知られている。本性質を利用し、新規in vivo遺伝毒性試験法として赤血球における膜タンパク質の有無を指標としたPig-a遺伝子突然変異試験が開発され、さらに感度を高めたCD71陽性幼若赤血球のみを対象とする方法も報告されている。本試験系は造血組織を評価対象とするため、骨髄増殖変動による評価系への影響を把握することは結果の解釈において重要である。そこで、ラットにerythropoietinの投与(EPO+)群及び非投与(EPO-)群を設け、遺伝毒性発がん物質であるN-ethyl-N-nitrosourea(ENU)及び非遺伝毒性発がん物質であるN-diethylnitrosamine(DEN)を単回投与し、全赤血球あるいは幼若赤血球を対象とした2種の試験法にて遺伝子突然変異を調べた。全赤血球測定では、血液を赤血球マーカーである抗HIS49抗体及び抗CD59抗体と反応させた後、フローサイトメーターにてCD59 陰性赤血球の出現頻度を算出した。幼若赤血球測定は、抗CD71抗体にて幼若赤血球を選別した後、上記の方法に準じて実施した。
その結果、ENU及びDENのいずれの投与群でも(EPO+)群において、(EPO-)群と比較し有意な造血亢進作用が認められた。ENU投与群において全血を用いた場合、有意な突然変異頻度の増加が認められ、その増加は(EPO-)群と比較し(EPO+)群で高値を示した。また幼若赤血球を用いた場合、(EPO-)及び(EPO+)群で同程度の突然変異頻度の増加が認められた。一方、DEN投与群においては(EPO-)及び(EPO+)群のいずれも突然変異頻度の増加は認められなかった。以上より、造血亢進は遺伝毒性物質であるENUには影響を与えるが、非遺伝毒性物質であるDENでは影響がないことが示された。

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