抄録
【背景】ポルフィリンの蓄積を誘発するProtox阻害剤Acifluorfenは、げっ歯類に肝障害、肝肥大及び肝腫瘍を誘発し、その腫瘍発生機序はヒトに外挿されると考えられている。Constitutive Androstane Receptor(CAR)は、マウスにおいてPhenobarbitalなどCYP2B誘導剤による肝肥大及び肝腫瘍発生に関与する核内受容体であるが、肝障害との関連も報告されている。そこで、我々はAcifluorfenが誘発する肝肥大及び肝障害へのCARの関与を検索した。【方法】6週齢の雄性C3H (Wild)およびC3H由来CAR knock out (KO)マウスにAcifluorfen 2500 ppmを1, 4及び13週間混餌投与し、肝重量、血液生化学的検査、病理組織学的変化及び肝臓におけるCYP発現を検索した。【結果】全投与期間のWild及びKOとも肝重量の顕著な増加とび慢性肝細胞肥大が同程度認められた。Wild及びKOとも肥大した肝細胞に一致したCYP4A蛋白発現とcyp4a10遺伝子の著しい発現亢進が認められた。また、肥大した肝細胞に一致したCYP2B蛋白発現及びCyp2b10遺伝子の発現亢進がWildで認められたが、KOでは発現は蛋白、遺伝子ともにWildに比し減弱した。一方肝障害については、Wildでは投与1週後から血清中ALT値の増加、投与4週間後から肝細胞の単細胞壊死及び炎症細胞浸潤を認め、持続的な肝障害に伴ってProliferating cell nuclear antigen陽性肝細胞率が増加したが、KOにおけるこれら変化はWildに比し軽微であった。さらに、Wildではリポフスチン陽性、偏光顕微鏡で陰性の褐色色素をクッパー細胞に認めたが、KOの同変化は軽減傾向にあった。【考察】Wild及びKOではびまん性肝肥大が同程度に認められたが、KOでCARの活性化を示すCYP2B発現は減弱していた。したがって、Acifluorfenが誘発する肝肥大にCARの関与は乏しく、CYP4Aを誘導するPPARαの活性化が主に関与していると考えられた。また興味ある結果として、Acifluorfenが誘発する肝障害及び細胞増殖にCARが関与することが明らかとなった。形態学的にポルフィリンの肝障害への関与は捉えられなかった。