抄録
【目的】一部の重篤副作用の発症機序として、免疫系の関与が示唆されていることから、免疫活性化をもたらす感染症は、これらの副作用の発症率や重篤度に影響する可能性がある。そこで、本研究では、2種の重篤副作用(横紋筋融解症、重症薬疹)を事例に、これらの発症患者の診療録情報を基に、副作用毎の感染症併発割合ならびに副作用重篤度との関連を解析した。
【方法】厚労省/PMDA、日薬連等のご協力の下、全国医療機関にて研究に同意の得られた重症薬疹及び横紋筋融解症患者の診療情報より、感染症(結核、肝炎、エイズ、インフルエンザ、単純ヘルペス、等)の有無(併発・既往)を調べ、感染症併発の有無と重篤性・発症までの期間等との関連を解析した。
【結果】横紋筋融解症の全発症例(全129例)の感染症併発・既往割合は23%であり、重篤度の高い病型および後遺症発現の割合は、統計学的有意差は見られないものの、感染症「有」の場合が「無」よりも高い傾向にあった。また横紋筋融解症発症までの平均日数は、感染「有」の方が短い傾向にあった。重症薬疹発症例(全258例)の感染症併発・既往割合は51%であり、重篤度の高い病型(TEN)、眼症状および後遺症の発現割合は、いずれも感染「有」の場合が「無」よりも統計学的に有意に高く、発症までの平均日数も感染「有」の方が「無」と比較し有意に短かった。なお、感染症治療薬が第一被疑薬の症例は、横紋筋融解症で12%、重症薬疹では31%であり、また、他の医薬品群が第一被疑薬の場合に比して、いずれの副作用においても重篤度の程度は比較的高く、発症までの平均日数も短い傾向にあった。【結論】以上の結果より、解析した2種の副作用に関し、重篤度と感染症(併発・既往)との関連性を示唆する知見が得られ、特に重症薬疹ではその寄与度が高いことが示唆された。