抄録
【目的】粗面小胞体(rER)にて作られたタンパクは、COPII輸送によってGolgi装置へと輸送される。COPII輸送の抑制はERストレスを誘導し細胞障害を導くことから、COPII輸送の評価系の確立は重要である。BrefeldinA(BFA)は可逆的にGolgi装置を断片化させ、cis-Golgi領域の一部はrERと融合する。BFAを除去するとrERと融合していたcis-GolgiタンパクはCOPII輸送依存性にGolgi領域へと輸送されcis-Golgi領域は回復する。そこでcis-Golgi形態の回復の程度を評価することにより、COPII輸送評価系の確立を試みた(第40回本学会発表)。本実験では、輸送関連タンパクに対する阻害剤の影響だけでなく、ノックダウンの影響についても本評価系が適用できるか、COPII輸送関連タンパクであるCasein KinaseII (CKII)およびPhospholipase D (PLD)について検討を行った。【方法】ラット正常腎由来株化細胞NRK細胞を用い、cis-Golgi領域の形態は抗Golgi58Kタンパク抗体による蛍光免疫染色により観察した。阻害剤はBFA洗浄除去後の回復過程において処置した。ノックダウン細胞はsiRNAをリポフェクション法により細胞に導入することにより作出し、mockを導入したコントロール細胞とBFA洗浄除去後の回復過程を比較した。【結果】CKII阻害剤TBB処置およびCKIIαノックダウン細胞は共にBFA除去後のcis-Golgi領域の形態の回復について抑制が認められた。PLD阻害剤FIPI・CAY10593・VU0364739処置と同様に、PLD1またはPLD2のノックダウンについても、共にcis-Golgi領域の形態の回復について抑制が認められた。阻害剤処置だけでなくノックダウンにおいても同様にcis-Golgi領域の形態の回復の抑制が見られたことから、輸送関連遺伝子をノックダウンした場合の影響についても本実験系を評価に用いることが可能であると考えられた。