日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-2
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優秀研究発表 ポスター
血管平滑筋細胞におけるTGF-β1による亜鉛輸送体ZIP8遺伝子の発現調節機構
*武正 文子吉田 映子山本 千夏藤原 泰之鍜冶 利幸
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抄録
【目的】TGF-βは動脈硬化病変の進展に寄与する最も重要なサイトカインの1つであり,血管平滑筋細胞の増殖,遊走,細胞外マトリックス代謝を制御する。一方,必須微量元素である亜鉛もまた増殖などの細胞機能を調節することが知られている。しかしながら,亜鉛代謝に関しては未だ不明な点が多い。細胞内亜鉛は亜鉛輸送体より制御されているが,そのうちZIP8は亜鉛を細胞外から細胞質に輸送する亜鉛輸送体である。本研究の目的は,血管平滑筋細胞の機能調節因子であるTGF-β1による亜鉛輸送体ZIP8の発現調節機構を明らかにすることである。
【方法】ウシ大動脈平滑筋細胞にTGF-β1を曝露し,亜鉛輸送体ZIP8 mRNAの発現を定量的RT-PCR法で,SmadシグナルおよびMAPKシグナルの活性化をウエスタンブロット法で検出した。RNA干渉法によるタンパク質の発現抑制を行った。
【結果および考察】TGF-β1は濃度および時間依存的にZIP8 mRNA発現を抑制した。TGF-β1はその受容体ALK5の阻害剤およびALK5 siRNAにより,TGF-β1によるZIP8 mRNAの発現抑制が消失した。TGF-β1によるSmad2/3の活性化をSmad2またはSmad3 siRNAにより発現を抑制したところ,Smad2 の発現を抑制した場合にのみTGF-β1によるZIP8 mRNAの発現抑制が消失した。MAPK経路を検討した結果,TGF-β1によりERK,p38およびJNKの活性化が認められたが,それぞれの阻害剤を処理してもZIP8 mRNAの発現に変化は見られなかった。以上の結果から,TGF-β1はALK5-Smad2シグナル伝達経路の活性化を介してZIP8の発現を抑制することが明らかとなった。本研究の結果は,TGF-β1がZIP8の発現抑制を介して血管平滑筋細胞の亜鉛代謝を調節することを示唆している。
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© 2015 日本毒性学会
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