日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-3
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優秀研究発表 ポスター
カドミウムによるUBE2Dファミリー遺伝子の発現抑制における転写因子YY1の関与
*徳本 真紀李 辰竜佐藤 雅彦
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抄録
【目的】カドミウム (Cd) は腎毒性を引き起こす有害重金属であるが、その毒性発現機構は明らかとなっていない。我々はこれまでにCdを曝露したラットおよびヒトの腎近位尿細管上皮細胞 (NRK-52EおよびHK-2) において、ユビキチン (Ub) 転移酵素UBE2Dファミリー遺伝子の発現減少に伴ってp53が過剰蓄積し、アポトーシスが出現することを見いだしている。しかしながら、CdによるUb転移酵素の遺伝子発現抑制機構は明確にされていない。そこで、NRK-52E細胞を用いてCdによって活性変動する転写因子を網羅的に解析したところ、最も顕著に活性が低下する転写因子としてYY1が認められた。YY1はp53を負に調節し、YY1の発現抑制により細胞増殖の停止やアポトーシスが誘導されることが知られている。本研究では、CdによるUb転移酵素の遺伝子発現抑制に及ぼすYY1の影響を検討した。
【方法】HK-2細胞を用いてCdによって活性変動する転写因子をProtein/DNA Arrayおよびゲルシフトアッセイにより解析した。HK-2細胞にYY1 siRNAを導入し、各mRNAレベルをリアルタイムRT-PCR法により測定した。
【結果および考察】NRK-52E細胞と同様にHK-2細胞でもCdによりYY1のDNA結合活性が抑制された。次に、転写因子結合予測配列データベースからUBE2D2およびUBE2D4の転写開始領域上流にYY1が結合しうることを確認した。そこで、YY1をノックダウンしたHK-2細胞におけるUBE2D2およびUBE2D4 のmRNAレベルを測定したところ、UBE2D4 mRNAレベルに変化はなかったが、UBE2D2 mRNAレベルは約30%減少した。以上の結果より、CdによるUBE2D2の遺伝子発現抑制は、これを制御する転写因子YY1の転写活性が低下するためであることが示唆された。
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© 2015 日本毒性学会
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