日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-202
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一般演題 ポスター
Muse細胞由来肝細胞の肝毒性・薬物動態評価系としての有用性 -マイクロRNAを用いたMuse細胞由来肝前駆細胞の成熟化方法の確立-
*河原田 一司是石 裕子労 昕甜上田 忠佳住田 能弘大津 見枝子明石 英雄出澤 真理Luc GAILHOUSTE落谷 孝広
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抄録

【背景/目的】
近年、ヒト初代肝細胞に替わる細胞として、多能性幹細胞から分化誘導・成熟化した肝細胞の利用が検討されている。我々は、間葉系組織に存在する多能性幹細胞「Muse細胞」に注目し、効率的な肝前駆細胞への分化誘導法を検討した。一方、我々はこれまでに、肝臓の成熟過程に関与するmicroRNAを網羅的に解析した結果、microRNA-148a(miR-148a)が肝細胞の成熟化を促進することを明らかにしている。そこで、Muse細胞を肝前駆細胞へ分化誘導し、得られた肝前駆細胞にmiR-148aを作用させ、肝細胞の成熟化を試みた。
【方法】
ヒト骨髄由来間葉系細胞からSSEA3陽性のMuse細胞を単離した。Muse細胞に発現する遺伝子Xを抑制し、分化誘導因子と組み合わせ肝前駆細胞への分化誘導を試みた。次に、分化誘導した肝前駆細胞にmiR-148aを作用させ成熟化させた。Muse細胞由来肝細胞にCYP酵素誘導剤を添加し、酵素誘導能を評価した。
【結果】
Muse細胞に発現する遺伝子Xを抑制することで、AFP、ALB、CK18、CK19陽性の肝前駆細胞への分化誘導を確認した。また、Muse細胞由来肝前駆細胞にmiR-148aを作用させることにより、肝特異的遺伝子の発現量は上昇し、miR-148aによる成熟化の促進を認めた。以上の結果から、肝細胞を誘導する出発の幹細胞として、Muse細胞の有用性が示唆された。今後は、フェノバルビタールやリファンピシンによるCYP2B6やCYP3A4誘導能のデータを得ることで肝毒性・薬物動態評価系への応用性を検討する予定である。

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© 2015 日本毒性学会
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