抄録
【背景及び目的】光アレルギー性は経皮製剤の安全性評価の上で重要な毒性情報であり、2014年に日米欧医薬品規制調和国際会議(ICH)にて「医薬品の光安全性評価ガイドライン」が定められた。しかしながら、モルモット等を用いた従来の光アレルギー性試験法は本ガイドラインではヒトへの予測性が不明との理由で推奨されていない。そこで、本研究では皮膚感作性試験法としてその信頼性が認められているLocal Lymph Node Assay(LLNA)を光アレルギー性評価に応用し、高精度かつ定量的に評価できる試験法の開発を試みた。
【実験材料及び方法】実験には雌性CBA/Ca マウス(日本エスエルシー)8~10週齢を用い、被験物質は皮膚感作性、光毒性及び光アレルギー性情報が既知の12物質を用いた。被験物質はUV吸収スペクトルを測定し、LLNAによる皮膚感作性の有無及び陽性物質についてEC3の算出を行った。次いで耳介厚さ変化及び耳介リンパ節重量を指標とした光毒性評価及び最適UV照射方法の選択を実施した。光アレルギー性の評価では、皮膚感作性及び光毒性のない最高濃度を試験用量として媒体及び被験物質投与群にそれぞれUV照射(UV+)群とUV非照射(UV-)群を設定した。UV照射方法は光毒性評価の際に得られる特性に従って最適化を行った。その他の試験操作及び条件はLLNAに従った。また、被験物質群の各個体の3H-thymidine取込量を媒体対照群の平均3H-thymidine取込量で除した値であるphoto Stimulation Index(pSI)を求めた。光アレルギー性評価は被験物質のpSIについてUV(+/-)群間で有意差検定(p<0.05)を実施し、有意差が生じた場合を陽性と判断した。
【結果及び考察】既知情報との比較の結果、光アレルギー性の判定結果は全て一致した。また、一連の試験操作で得られた皮膚感作性及び光毒性の結果も全て一致した。このことから本手法は一連の試験操作で光アレルギー性のみでなく、皮膚感作性及び光毒性も評価可能であり、皮膚毒性を総合的に評価できる可能性が示された。