抄録
新規に承認されるヒト用新有効成分含有医薬品の有効成分原体又はプロドラッグの活性代謝物が有する、化学物質としての化学的、物理的、生物学的な性状に由来して起こりうる、直接及び間接的な生物に対する影響を評価して、人の健康と生態系へのリスク軽減を図ることは重要な課題である。現在、ヒト用新有効成分含有医薬品の環境影響評価に関する考え方とその進め方について検討を進め、ガイダンス私案を作成している。ヒト用新有効成分含有医薬品の環境影響評価は、大きく二段階に分けて、段階毎に順次評価していく方法を提案している。最初の段階(第I相)では、物理化学的性質を考慮した上で、医薬品の成分として用いられている物質による環境に対する曝露を、試験を実際に実施することなく、科学的な情報に基づいた想定値と設定値により予測環境濃度(PEC)表層水値を求める。原体及びヒト体内で原体の10%を超えて生成する代謝産物について求めたPEC表層水値が一定値未満の場合には、環境リスクは考慮しなくともよいと判断して、リスク評価を終了する。算出された表層水のPCE値が、0.01mg/L以上であれば、次の段階の評価(第II相)を実施する。第II相では、環境における運命及び影響に関する情報を収集してリスク評価を実施する。この段階では、OECDのテストガイドライン等の妥当性評価がなされた試験方法により、藻類、甲殻類(ミジンコ)及び魚類の3種の生物種を用いて、慢性毒性を考慮できる短期毒性試験を実施し、予測無影響濃度(PNEC)を求め、PNECに対するPEC表層水値の比を求める。PNECに対するPEC表層水値の比の値が1を超える場合は、想定値や設定値の精緻化、追加試験の実施により、PEC表層水値及びPNEC値を精緻化して再評価する。この段階で、リスクの排除ができない場合においては,予防・安全のために環境への影響を最小限に抑える実施可能な対策をとることを求め,明確な管理のもとで使用する。 以上のような手順に従い、リスク評価を実施することを検討している。