日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-27
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優秀研究発表 ポスター
バルプロ酸の発達期暴露によるラットの海馬歯状回の生後ニューロン新生に与える影響
*渡邉 洋祐村上 智亮阿部 一田中 猛白木 彩子木村 真之水上 さやか板橋 恵寒川 祐見吉田 敏則渋谷 淳
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抄録

【背景及び目的】抗てんかん薬であるバルプロ酸 (VPA) は、GABAトランスアミナーゼ阻害により抑制性シナプスでのGABA量を増加させ、薬理作用を発現する。妊婦の服用により子供の自閉症のリスクが高まることが知られ,実験的に発達期でのニューロン移動異常の発生が報告されている。本研究ではVPA のラットを用いた妊娠期及び授乳期暴露実験を行い、離乳児動物での海馬歯状回 (DG) におけるニューロン新生への影響を検討した。
【方法】各群11~12匹の妊娠SDラットに、妊娠6日目からVPAを0、667、2000 ppmの濃度で離乳時(生後21日目)まで飲水投与し、雄児動物を離乳時と性成熟後(生後77日目)に解剖し、灌流固定後の脳についてDGの顆粒細胞層下帯 (SGZ) と顆粒細胞層におけるニューロン新生の各段階にある細胞数の変動及び歯状回門にあり、ニューロン新生を制御する各種のGABA性介在ニューロンの分布を免疫組織化学的に検討した。
【結果】母動物の摂餌量は低用量群及び高用量群において産後2日目で低下し、飲水量は高用量群において産後2、14、17及び20日目で低下したが、母動物及び児動物の体重に変動はなかった。離乳時の児動物の歯状回門ではparvalbumin陽性細胞が高用量群で、reelinが低用量群と高用量群で減少した。calbindin、calretinin陽性細胞数は変動しなかった。SGZではSox2、Tbr2、doublecortin陽性細胞、PCNA陽性増殖細胞及びTUNEL陽性アポトーシス細胞のいずれも変動しなかった。【考察】VPAの妊娠期及び授乳期暴露により、離乳時の児動物で海馬歯状回のGABA性介在ニューロンのポピュレーション変動が認められ、その薬理作用を介した機序が推察された。一方、生後ニューロン新生への影響は見いだせなかったが、reelinを標的とした新生後のニューロンの移動障害が生じている可能性が示唆された。

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© 2015 日本毒性学会
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