日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-41
会議情報

優秀研究発表 ポスター
多層カーボンナノチューブの肺障害性と遺伝子発現への影響
*加賀 志稀深町 勝巳二口 充津田 洋幸酒々井 眞澄
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
本研究ではMWCNTの長さの違いが肺に対してどのような影響を及ぼすのかを組織と遺伝子発現レベルで検証した。MWCNTを25 µmの篩(ふるい)にかけ、通り抜けたMWCNTをflow though(FT)、篩の上に残っているものをremaining(R)、通らなかったものをprimary mixed fraction(P)とした。10週齢雄F344ラット肺にMWCNTを2週間で計8回各分画および分散剤(PF68, Vehicle control, VEH)を気管内噴霧後(計1.0 mg)、2週間、52週間、104週間で屠殺剖検し肺を取り出し各解析に用いた。先行研究において初代培養マクロファージにMWCNTをばく露し網羅的にスクリーニングした結果発現量の高かったCsf3、IL6、Ccl4、Cxcl2を解析した。2~5個体サンプルをそれぞれアッセイし発現シグナルを平均した。アッセイ結果のサマリーは次の通り。2週試験:(mRNA発現)Csf3のFT> VEH、P、R< VEH、IL6、Cxcl2のP、 FT、 R< VEH、Ccl4のFT、 R> VEH、 P< VEH。(タンパク発現)Csf3、IL6、Cxcl2、Ccl4のP、FT、R>VEH。52週試験:(mRNA発現)Csf3のP、R> VEH、FT< VEH、IL6、Cxcl2、Ccl4のP、FT、R> VEH。(タンパク発現)Csf3のP、FT> VEH、R=VEH、IL6、Ccl4のP、FT、R< VEH、Cxcl2のP、FT、R> VEH。2週試験ではFT分画での炎症面積は溶媒対象群および他の2分画と比較して有意に増加していた。52週試験では炎症面積、異物肉芽組織/線維化の数は溶媒対象群と比較して有意に増加した。分画間での差はなかった。2週間試験のmRNA発現レベルはいずれの分画でも低い。タンパク発現では、どの分画でも発現の上昇傾向がみられた。52週試験ではいずれの分画でもmRNA発現が上昇した。タンパク発現ではCsf3とCxcl2の発現が維持された。炎症像は52週経過後も持続してみられるのでCsf3とCxcl2のタンパク発現状況と炎症像は比較的リンクすると考えられる。以上よりCsf3とCxcl2はCNT投与に伴う炎症を反映するバイオマーカーになりうる。
著者関連情報
© 2015 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top