日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-40
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優秀研究発表 ポスター
グルココルチコイドによる抗がん剤感受性増強作用と有害事象発症機構に関する研究
*守田 倫恵青木 重樹伊藤 晃成
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抄録
【目的】適切ながん化学療法は、抗がん剤によってがん細胞を正常に死滅させることであり、その実施は患者の予後にも直結する重要な課題である。抗がん剤の過感受性は時としてがん細胞の異常な細胞死を引き起こし、その結果発症すると考えられているのが重篤副作用に指定されている腫瘍崩壊症候群(TLS)である。独立行政法人医薬品医療機器総合機構の「医薬品副作用データベース」を用いて、急性リンパ性白血病治療期にTLSを発症した患者の投薬状況を調査したところ、ステロイドの一種であるグルココルチコイド(GC)併用とTLS発症に強い因果関係があることが示唆された。GCは、寛解導入療法や維持療法期に汎用されており、その感受性には個人差を認めることが知られている。本研究では、GCががん細胞に与える影響を細胞内エネルギー代謝の観点から検討し、さらに抗がん剤感受性に及ぼす作用を評価した。
【方法】GC感受性が認められているヒト急性リンパ性白血病由来のCCRF-CEM細胞をクローン化し、GCが細胞増殖に与える影響、および抗がん剤と併用した際の細胞死をフローサイトメトリーによって評価した。さらに、GCによる抗がん剤感受性の増強効果を認めた細胞に関して、細胞内エネルギー代謝経路を検討した。
【結果・考察】CCRF-CEM細胞クローンは、GCによって(ⅰ)細胞増殖が抑制され、かつ抗がん剤による感受性を増強させるもの、(ⅱ)細胞増殖は抑制されるが、抗がん剤感受性には影響を与えないもの、(ⅲ)細胞増殖および抗がん剤感受性いずれにも影響を与えないもの、の3群に分類された。また、GCの曝露によって、細胞内の主たるエネルギー供給源が解糖系から酸化的リン酸化にシフトしていることが見出され、抗がん剤感受性を増強させていることが示唆された。これらの検討から、GCによる細胞内エネルギー代謝経路の変化が、化学療法時のがん細胞死の過剰な誘導に関与しているのではないかと考えられた。
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© 2015 日本毒性学会
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