抄録
【背景・目的】薬剤誘発性リン脂質症は、陽イオン性両親媒性構造を持つ多くの薬剤により誘起され、肝臓など様々な臓器へのリン脂質蓄積を特徴とする疾患である。近年、本疾患の評価系として物性を考慮した in silico 評価系や、培養細胞を用いた in vitro 評価系の構築が報告されている。しかし、これらの評価と in vivo 評価に乖離がみられる場合もある。この要因として生体内における代謝の寄与を考慮できていない可能性が考えられる。そこで、生体内での薬物代謝活性を維持した培養が期待されるラット肝細胞スフェロイド培養を用いて本毒性の評価を行った。
【方法】 Crl:CD (SD) 系雄性ラット(7週齢)から肝細胞を単離し、 Micro-Space Cell Culture Plate (kuraray Co., Ltd) に播種しスフェロイドを形成させた。培養6日目で、本毒性の陽性対照、陰性対照の化合物を曝露し、曝露後48時間でのリン脂質量を蛍光プローブ (NBD-PE) を用い定量化し、リン脂質症の指標とした。また、本毒性に代謝物が関与する可能性がある化合物について P450 阻害剤 1-aminobenzotriazole (ABT) 併用曝露による本毒性への影響を確認した。スフェロイドで生成する代謝物濃度は LC/MS/MS により定量した。
【結果・考察】 NBD-PE 蛍光強度の上昇は陽性対照の曝露群のみで確認された。 In silico 評価による予測では毒性が過小評価された化合物について、本培養系の評価では代謝物生成と共に蛍光強度上昇が確認された。また、 ABT と併用曝露したところ代謝物生成が抑制され、蛍光強度の上昇はみられなかった化合物も存在し、本毒性において P450 の関与が示唆された。以上より、薬物代謝反応を考慮に入れたリン脂質症の評価が有用であることが示された。