抄録
【目的】安全性の高い化粧品を開発する上で,原料の光安全性を評価することは非常に重要である.本研究では,UV照射時における被験物質による活性酸素の生成を評価する手法であるReactive oxygen species (ROS) assayを化粧品の光安全性評価に活用するために,分子量不明素材に対する評価法を確立すると共に,光感作性評価法としての有用性の検討を行った.
【方法】化粧品素材を中心に分子量が既知の46物質(光毒性・光感作性物質29物質を含む)について,µg/mL単位でのROS assayを実施し,従来法(200 µM)と同等の感度を有する試験濃度の設定を行った.また,分子量が不明な混合物(植物抽出液)20素材(光毒性・光感作性素材11素材含む)について,設定した試験濃度を用いて予測性の確認を行った.光感作性評価法としての有用性確認については,光感作性物質として報告されており,かつ過去にin vivoの試験法によって光毒性が陰性であると報告されている物質、もしくは3T3 Neutral Red Uptake Phototoxicity Test(3T3 NRU PT)で陰性を示す物質を探索しROS assayの結果と比較した.
【結果・考察】ROS assay は試験濃度を50 µg/mLに設定することで従来法と同等の予測精度を示し,感度100%,正確性90%程度の高い予測性が維持されることが明らかとなった.分子量が不明な素材についても, 50 μg/mL で実施することで感度100%,正確性80%程度の予測性が示されることが明らかとなり,ROS assayは分子量が不明な素材の光安全性についても評価可能であることが示唆された.光感作性物質の評価において,光毒性試験法で陰性が示される18物質に対しても,ROS assay は全て陽性結果を示した.以上の結果は,ROS assayが化粧品の光安全性(光感作性含む)の評価に関しても有用であることを示しており,動物実験に依存しない化粧品の光安全性保証体系の構築に結びつくものと期待される.