日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-56
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一般演題 ポスター
新規Bcr-Abl/Src阻害薬ボスチニブの毒性プロファイル
*田原 誠Bart A JESSEN
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抄録

ボスチニブ水和物は,慢性骨髄性白血病(CML)の発症及び進行に関与するBcr-Abl チロシンキナーゼ及びSrc ファミリーキナーゼの選択的かつ強力な阻害剤である。ボスチニブはAbl 及びSrc チロシンキナーゼに対する選択性が高く,血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)及びKit チロシンキナーゼに対する阻害作用は低いことから,PDGFR あるいはKit チロシンキナーゼ阻害に起因すると考えられる有害事象を軽減できると考え,開発された。in vitro の試験では,各種ヒトCML 細胞株のみならずイマチニブ耐性細胞に対しても細胞増殖抑制作用が認められ,CML 移植動物モデルにおいて腫瘍の消失が示されている。
本薬の一般毒性試験では,一般状態所見および腸管における病理組織学的所見として,ラットおよびイヌで嘔吐,糞便異常ならびに腸管の内腔拡張,粘膜過形成,杯細胞肥大・過形成,びらんまたは浮腫などが認められた。これらの結果から,消化管系はボスチニブの毒性の主たる標的臓器であると考えられた。消化管毒性の発現は全身曝露量よりもむしろ胃腸管内濃度に依存したことが示唆されており,毒性発現の機序として,経口投与されたボスチニブの腸管における局所的な刺激作用が関与している可能性が考えられた。これら非臨床試験で認められた毒性は比較的高用量で発現しており,また毒性変化の大部分には回復性が認められた。
臨床試験においても胃腸障害(下痢,悪心,嘔吐)は有害事象として高頻度に発現しているものの,重篤例は極めて少数であり,また大多数の症例で回復していることから,以上のボスチニブの非臨床毒性プロファイルは本薬の適応対象患者(CML)への投与に際しては容認できるリスクであると考えられた。

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© 2015 日本毒性学会
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