日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-72
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一般演題 ポスター
血管内皮細胞における有機テルル化合物の細胞毒性に対する置換基効果
*岡崎 貴大中浴 静香吉田 映子藤原 泰之山本 千夏安池 修之鍜冶 利幸
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抄録
【背景・目的】有機-無機ハイブリッド分子は従来の有機・無機化合物とは異なる機能や性質を持つことから,生体機能解析ツールや創薬リード化合物としての活用が期待できる。その一方で,安全性確保のために,新たな「ハイブリッド分子の毒性学」の確立が必要となる。当研究室では,血管内皮細胞に対して有機テルル化合物(DPDTe)が高い細胞内蓄積と強い毒性発現を示すのに対し,その硫黄およびセレン置換体はそのような毒性や細胞内への蓄積や毒性を示さないことを見出している。本研究では,DPDTeの電子状態と細胞毒性の関連性を探るために,DPDTeの細胞毒性への置換基効果を調べた。
【方法】ウシ大動脈由来血管内皮細胞に,有機テルル化合物DPDTeとそのp-位置換体4種(p-OMe基置換体,p-Me基置換体,p-Cl基置換体,p-Naphtyl基置換体)をそれぞれ処理し,形態学的観察,AlamarBlue-assayによるミトコンドリア活性の測定,ICP-MSによる細胞内テルル蓄積量の測定を行った。
【結果・考察】DPDTeと比較して,p-MeO基置換体のみ細胞毒性が増強し,他の置換体(p-Me基,p-Cl基およびp-Naphtyl基)では毒性が減弱した。毒性の減弱の度合いは嵩高い構造(p-Naphtyl基)で最も顕著であり,次いで求電子性置換基(p-Cl基)において顕著であった。このことから,ジテルル化合物の細胞毒性は結合する分子構造の嵩高さだけでなく電子状態の影響を受けることが示唆された。細胞内金属蓄積量を測定した結果,これらの化合物のうち,細胞毒性の強いDPDTeおよびp-OMe基置換体で処理した細胞に高い蓄積が認められた。最も毒性の弱いp-Naphtyl基置換体は5つの化合物の中で最も低い蓄積量の値を示した。この結果から,毒性の強さと細胞内テルル蓄積量は全体として相関することが示唆された。
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© 2015 日本毒性学会
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