抄録
【目的】アルギン酸(Alginic acid :Alg)は天然の藻類に含まれる多糖類であり,食品添加物や健康食品あるいは医薬品の原料として広く使用されている.また,そのナトリウム塩(Na-Alg)はストロンチウム(Sr)の体内取り込みを低減させ,体外排泄を促進する作用を有することが報告されている1,2).さらに我々は,アルギン酸のカルシウム塩(Ca-Alg)がSrのみならずセシウム(Cs)に対しても同様な効果を有することを明らかにした3).もし他の重金属においても同様な作用が認められれば,Algの重金属解毒剤としての有用性はさらに増すものと期待される.そこで本研究ではNa-Algと各種重金属との親和性を比較検討し,その吸着メカニズムを検討した.
【方法】Na-Alg溶液に各種重金属の塩を加え,メンブランフィルターを用いて遠心分離した.ろ液の金属濃度を原子吸光法を用いて測定することにより,Algに吸着した金属濃度を算出した.各種金属濃度における結合濃度から,Double reciprocal plotを用いて各種金属の結合部位数n,結合定数Kを求め,親和性を検討した.それらの結果と各種重金属の価数,イオン半径などの物理的性質との相関性を検討した.
【結果・考察】結合定数Kの値は,Srの値が最も大きかった.また,イオン半径がある一定領域の金属との親和性が高い傾向が認められ,各種重金属の物理的性質から,Algによる重金属の吸収抑制や排泄促進効果を類推できることが示唆された.これらの相関性が,今後重金属解毒剤としてのAlgの有用性を検証する上で有効な指標となることが期待される.
1) 西村義一ら, Radioisotopes, 40, 244-247 (1991).
2) Hesp R. et al., Nature, 5017, 1341-1342 (1965).
3) Y. Idota, et al., Biol. Pharm. Bull., 36, 485-491 (2013).