日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-78
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農薬のリスク評価にイヌ1年間反復投与毒性試験は不要か?
*向井 大輔田中 亮太納屋 聖人林 真
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抄録
農薬評価に必要な毒性試験として、急性毒性、皮膚刺激性、眼刺激性、皮膚感作性、急性神経毒性、急性遅発性神経毒性、反復毒性、反復経口神経毒性、反復経口遅発性神経毒性、1年間反復経口毒性、発がん性、繁殖毒性、催奇形性、変異原性試験などがある。食品安全委員会ではこれらの毒性試験成績を評価し、種差や個体差を配慮してヒトに対する健康影響評価を行い、ホームページでその結果を公表している。今回、これらの公表された評価書をもとに、イヌの1年間反復投与毒性試験成績がなくても、これまでと同様に一日摂取許容量(ADI)が設定できるかを推定した。
イヌの1~2年間反復投与毒性試験(イヌ1~2年試験)をADI算出根拠とした化合物は32%を占め、これはラット2年間反復投与毒性試験(43%)に次いでADI算出根拠に多く使用されている。イヌ1~2年試験成績を用いない場合、イヌの3ヶ月間反復投与毒性試験(イヌ3ヶ月試験)成績が重要となるが、イヌ3ヶ月試験のNOAELは、イヌ1~2年試験のNOAELよりも52%の化合物で1.5倍を超えて高くなり、その中でも16%の化合物では5倍を超える程高い。
ADIの算出にイヌ1~2年試験成績を用いない場合、およそ18%の化合物でADIが現在よりも高く算出されることになり、イヌ1~2年試験成績を用いた場合と同等のリスク管理水準を維持できなくなる。
そこで、イヌ3ヶ月試験のNOAELを追加の安全係数で除してADI算出根拠として使用する方法を試みた結果、ADIが現在よりも高くなる化合物の割合は、追加の安全係数を3.5とした場合には5%以下、7とした場合には1%以下に抑えられたため、追加の安全係数を用いることによりイヌ1~2年試験成績を用いた場合と同等のリスク管理水準を維持できると考えられる。しかしながら、これによりADIが低くなる化合物数は増加するため、全体的には現在よりも厳しい規制となる弊害が生じることになる。
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© 2015 日本毒性学会
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