抄録
昨今の医薬品開発において、世界的規模で新薬の承認数が横ばい状態であるのに対し、研究開発費が増え続けているという深刻な問題に直面している。その一因として、in vivo 試験や臨床試験の際に突発的に現れる薬物のオフターゲット由来の副作用が挙げられる。オフターゲットの早期発見を目的として、開発初期の段階から様々な毒性試験が行われているが、全ての副作用の原因となりうる因子について検討することは現実的に不可能である。このような背景から、毒性試験を補完するためのin silicoによる網羅的なオフターゲット探索に大きな期待が寄せられている。
一方で、“K” supercomputer-Based Drug Discovery(KBDD)プロジェクトは、スーパーコンピュータ京の創薬利用を目的とした、大学等の公的研究機関、製薬企業およびIT企業が参画するプロジェクトである。本プロジェクトでは、スーパーコンピュータ京を用いたタンパク質(キナーゼおよびGPCR約650種類)と化合物(PubChem由来の3000万化合物)の大規模なバーチャルスクリーニングが行われた。本研究におけるタンパク質-化合物間相互作用予測には、京都大学奥野教授らによって開発されたChemical Genomics-Based Virtual Screening (CGBVS)法が用いられた。CGBVS法は、既知の化合物-タンパク質間相互作用情報を用いたマシンラーニングの技術によって、未知の化合物-タンパク質間相互作用を予測する手法である。
当日は、KBDDプロジェクトから得られた相互作用予測情報の活用事例として、社内テーマにおけるオフターゲット探索について説明を行う。また、副作用予測へのアプローチとしてのビッグデータの活用方法について議論したいと考えている。