日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: S21-2
会議情報

シンポジウム21 類金属の化学と毒性学:その有用性と有害性のトレードオフからの脱却を目指して
活性酸素に対する生体防御システムを模倣したセレン抗酸化剤の分子設計
*岩岡 道夫
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
生体内には活性酸素に対する様々な防御システムが存在するが、セレンを含む酵素(含セレン酵素)もその一役を担っている。また、強い抗酸化作用をもつ低分子セレン化合物(セレノネインなど)が血液中から見出されるなど、セレンの生体内代謝とその抗酸化作用についても関心が高まっている。我々は、低分子セレン化合物の分子構造を制御することによって、含セレン酵素やセレン抗酸化剤の生理作用を模倣した生体防御システムのモデル系を構築することに興味をもっている。本講演では、(1) セレノペプチドを用いた含セレン酵素の活性中心のモデル化、(2)リン脂質ヒドロペルオキシドグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx4)と類似の抗脂質ペルオキシ化作用をもつセレン化合物の分子構築について、最近の成果を報告する。
グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)はセレノシステインを活性中心とする抗酸化酵素である。これまでに、GPxの抗酸化作用を模倣した低分子セレン化合物が数多く提案されている。我々はセレノシステインを含むペプチド(セレノペプチド)を用いてGPxの作用機序を明らかにすることを目的に様々なアミノ酸配列をもつセレノペプチドを合成し、そのGPx様触媒活性の評価を行った。その結果、GPx1の活性発現において活性中心のトライアッドが重要な役割を果たしていることを実証することに成功した[1]。また、GPx1のアイソザイムであるGPx4の抗酸化作用を模倣した両親媒性セレン化合物を分子設計し、リポソーム(細胞膜モデル)を用いて抗脂質ペルオキシ化活性を測定した。その結果、セレン抗酸化剤へのアプローチとして、水溶性セレン化合物と高級脂肪酸を組み合わせる我々の戦略の有用性を明らかにした[2]。
[1] T. Takei, et al., J. Phys. Chem. B, 2014, 118, 492.
[2] M. Iwaoka, et al., ChemBioChem, submitted.
著者関連情報
© 2015 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top