日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: S3-3
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シンポジウム3 今話題の薬毒物中毒の基礎と臨床 -危険ドラッグから医薬品まで-(日本中毒学会との合同シンポジウム)
危険ドラッグ患者の実態と治療
*小林 憲太郎
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抄録

近年、日本における違法薬物を含むドラッグの広がりは著しく、特に2011年あたりから流通した植物片に合成カンナビノイドなどを添加させた「脱法ハーブ」は多くのドラッグ中毒患者を生む原因となった.ドラッグ中毒患者は自身の身体や精神を痛みつけるだけでなく交通事故等により傷病者を出すようなことが珍しくなく大きな社会問題となっている.危険ドラッグを販売しているショップが多く存在する池袋、新宿に隣接する当院においては危険ドラッグ流行に伴い、危険ドラッグ中毒の患者が多数救急搬送されるようになった。搬送時の状況として初めから危険ドラッグ中毒であると判明している患者もいるが、路上で意識障害で倒れていたなど当初はドラッグ中毒の患者であるか分からない患者も多い.搬送される患者の数は危険ドラッグの流行に密接に関係しており2014年夏の流行時においては1ヶ月で30人以上の危険ドラッグ中毒患者が搬送された.患者の症状は多彩であるが、交感神経賦活症状や痙攣・不穏等を含む中枢神経症状を呈している患者が多い傾向がある。
危険ドラッグ中毒患者に対する治療は対症療法しかやりようがない事が特徴である.使用されたドラッグの含有成分はほぼ不明であり、中毒の原因となっている物質が即時判明する事はほとんどないからである。救急外来にてしばらく経過観察していると薬物の効果が減弱し、症状が改善し帰宅できる状態となる事がほとんどであるが症状が遷延する場合においては入院加療を要し、場合によっては集中治療室での治療が必要となる事もある。さらに診療を行う医療従事者の安全の確保にも注意を払う必要がある。不穏状態で患者が暴れている事もあり、ほぼ違法状態のドラッグを使用していること自体、犯罪の可能性を考慮しながら診療を行わなければならないためである。警察への連絡については社会的問題や安全面の問題から当院では可能な限り介入をお願いするようにしている.

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© 2015 日本毒性学会
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