日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: W2-2
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ワークショップ2 メタロチオネイン研究の最前線 -誘導機構解明に向けた挑戦-
亜鉛動態におけるメタロチオネインの役割
*神戸 大朋
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抄録

 メタロチオネイン(MT)は細胞質に局在し、有害金属毒性の軽減などに働く防御タンパク質として知られるが、亜鉛ホメオスタシス維持にも重要な役割を果たす。近年、このメタロチオネインの働きが、亜鉛トランスポーターの働きと密接に連携していることが明らかにされてきたが、最近、我々は両者の細胞質内亜鉛代謝における協調的な機能が、分泌型亜鉛要求性酵素の活性化に不可欠であることを見出した。
 分泌型亜鉛要求性酵素の一つである組織非特異的アルカリフォスファターゼ(TNAP)は、小胞体やゴルジ体といった分泌経路に局在する亜鉛トランスポーター(ZnT5-ZnT6ヘテロ二量体とZnT7ホモ二量体)によって膜輸送された亜鉛を受け取り、活性化される。この過程において、それぞれの二量体は、細胞質内で受け渡された亜鉛を分泌経路内腔に送り込むが、その分子レベルでの知見は、これまで全く得られていなかった。我々は、MT欠損株において、細胞質亜鉛が上昇しているにも関わらず、TNAPの活性化が有意に減少していることを見出した。さらに、MTと同時に細胞質亜鉛の恒常性維持に重要なZnT1やZnT4といった亜鉛トランスポーターを欠損させる(3重欠損株)と、TNAP活性はほとんど検出されなくなった。この3重欠損株では、細胞質内亜鉛が野生株に比べて大きく上昇しているにも関わらず、TNAPを活性化できなかったが、過剰の亜鉛を添加することによって細胞質亜鉛濃度を著しく上昇させると、TNAP 活性は上昇した。また、3重欠損株におけるZnT5-ZnT6ヘテロ二量体とZnT7ホモ二量体の機能は正常であった。これらの結果は、MTを中心とした細胞質内亜鉛動態制御が、ZnT5-ZnT6やZnT7二量体を介したTNAPの活性化に機能することを示しており、MTによる細胞質の亜鉛代謝の厳密な制御が、分泌経路の亜鉛代謝にも重要な役割を果たすことを示している。

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© 2015 日本毒性学会
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