日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: W2-3
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ワークショップ2 メタロチオネイン研究の最前線 -誘導機構解明に向けた挑戦-
メタロチオネイン遺伝子発現に対するエピジェネティックな制御機構の解析
*木村 朋紀
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抄録

ゲノムDNAは、ヒストンに巻きついたヌクレオソーム複合体であるクロマチン構造を取った形で存在しており、一般的にDNAがメチル化修飾を受けると転写が抑制され、ヒストンがアセチル化されると転写が活発になることが知られている。近年、このような、いわゆるエピジェネティックな機構が様々な遺伝子発現において重要な役割を担っていることが明らかにされてきている。我々は、ユビキタスな発現が認められる分子種であるメタロチオネイン(MT)1および2のうち、MT1について解析を行っており、その結果、MT1誘導には金属応答性転写因子MTF1のMT1プロモーター領域への結合だけでなく、転写共役因子p300とMTF1との複合体形成も必須であることを明らかにしてきた。また、MT1の転写活性化に伴い、プロモーター領域のヒストンH3量減少というエピジェネティックな変化が起こることも示してきた。このエピジェネティックな変化は、MTF1支配遺伝子であるMT2やZnT1遺伝子でも観察されることから、MTF1を介した転写に共通した現象であるのかもしれない。一方、その発現に臓器特異性が認められるMT3に関しては、発現が認められない細胞株においてプロモーターが高度にメチル化されており、メチル化阻害剤によってその割合を低下させることで発現が顕著に増加することが知られている。本講演では、我々の研究成果を中心に、MT遺伝子発現に対するエピジェネティック制御を紹介するとともに、エピジェネティックな遺伝子発現調節の毒性学的意義を議論したい。

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© 2015 日本毒性学会
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