日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: W2-4
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ワークショップ2 メタロチオネイン研究の最前線 -誘導機構解明に向けた挑戦-
有機-無機ハイブリッド分子を活用した血管内皮細胞のメタロチオネイン誘導機構の解明
*鍜冶 利幸
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抄録
血管内皮細胞は,血管内腔を一層に覆っているcell typeである。内皮細胞の機能障害が血管病変の要因となり得ることから,内皮細胞が持つ生体防御機構を解明することは重要である。メタロチオネイン(MT)は,生体防御因子の1つである。MTの誘導には転写因子MTF-1の活性化が必須であるとされており,その活性化にはMTF-1への亜鉛の結合が必要である。しかしながら,内皮細胞はMT誘導能を有するが,内皮細胞に無機亜鉛を曝露してもMTはほとんど誘導されない。カドミウムは内皮細胞においてMTを誘導するが,その非特異的な反応性ゆえにMT誘導機構の解析ツールとして不適である。有機-無機ハイブリッド分子は,金属の導入により従来の有機化合物や無機化合物ではなし得ない三次元構造および電子状態を持ち,特異な生物活性が期待される化合物群である。我々は,有機-無機ハイブリッド分子ライブラリーから内皮細胞毒性を示さずMTを誘導する銅錯体Cu10および有機アンチモン化合物Sb35を活用して培養ウシ大動脈内皮細胞におけるMT誘導機構を解析した。両化合物とも転写因子MTF-1およびNrf2を活性化し,それぞれの応答配列MREおよびAREを活性化した。その結果,この細胞が発現しているMTアイソフォーム(MT-1A,MT-1EおよびMT-2)のうち,MT-1A/1EがMTF-1-MRE経路とNrf2-ARE経路の両方の活性化によって誘導されるのに対し,MT-2はNrf2-ARE経路を必要とせずMTF-1/MRE経路が活性化されれば誘導されることが示唆された。Cu10およびSb35の類縁体を用いた研究成果も紹介し,併せてMT-1とMT-2の機能分化の可能性についても議論したい。
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© 2015 日本毒性学会
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