日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-102
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一般演題 ポスター
ヒト・ラット初代肝細胞を用いたミトコンドリア障害に起因する薬剤性肝毒性の評価
*劉 聡関根 秀一伊藤 晃成
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抄録

【目的】肝臓では主にミトコンドリアでの酸化的リン酸化によりATPが合成される。一方、通常の培養条件では培地中にGlucoseが高濃度存在するため、ATPの大部分がサイトソルの解糖系で供給される(Crabtree効果)。そのため通常の培養条件では薬物によるミトコンドリア障害に起因する細胞毒性を過小評価している可能性がある。我々はラット初代肝細胞をGalactose培地で培養し、更に酸素濃度を80%に上昇させることで、通常の培養条件と比べ、肝障害誘発薬物によるミトコンドリア毒性の感受性が増強することを明らかにした。ミトコンドリアは活性酸素種(ROS)の主な発生源として知られている。そこで、本研究においては薬物によるミトコンドリア障害に寄与する細胞毒性感受性を増大させることを目的として、薬物と共にtransferrinを曝露し、毒性感受性が増強するかを検討した。また、ラット肝細胞はヒト肝細胞と比べ、代謝酵素や酸素要求性などに種差が存在することが知られている。そこで、ヒト肝細胞を用いて、種々の培養条件下でミトコンドリア毒性感受性の変化について検討した。【方法】ラット肝細胞、またはヒト肝細胞をGlucose/Galactose培地、および酸素濃度を20/40/80%の種々条件で培養し、酸化的リン酸化活性の指標として、酸素消費と乳酸産生量を測定した。Transferrin(6.25 μg/ml)の添加により、活性酸素と細胞毒性への影響を検討した。【結果・考察】ラット肝細胞はGalactose培地・酸素濃度80%、ヒト肝細胞は、Galactose培地・酸素濃度を40%で培養することで、乳酸産生量が低下すること、更に薬物をtransferrinと共曝露することで、細胞毒性の感受性がより増強した。以上から、ラット・ヒト肝細胞を生体の肝臓により近い条件で培養し、更にtransferrinを添加することで、ミトコンドリア障害に起因する肝細胞毒性をより効果的に評価できることが明らかとなった。

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© 2016 日本毒性学会
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