日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-204
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1,4-ジクロロブタンの反復投与毒性及び生殖発生毒性のスクリーニング評価
*五十嵐 智女小林 克己川村 智子松本 真理子長瀬 孝彦勝亦 芳裕小野 敦山田 隆志広瀬 明彦
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抄録
【はじめに】1,4-ジクロロブタン(CAS No. 110-56-5)は医薬品・農薬・香料の原料や溶媒として使用される化審法上の既存化学物質であり、ヒト健康影響のスクリーニング評価を行うためにラット28日間反復投与試験(OECD TG 407)、ラット簡易生殖発生毒性試験(OECD TG 421)を実施した。【方法】雌雄のCrl:CD(SD)ラット(6-12匹/性/群)に1,4-ジクロロブタンを0、12、60、300 mg/kg/day(溶媒:コーン油)の用量で28 日間強制経口投与し、対照群及び高用量群の半数の動物には14 日間の回復期間を設けた。本試験ではNOAELが得られなかったため、続いて実施した簡易生殖発生毒性試験では用量設定を0、2.4、12、60 mg/kg/dayとし、交配前14日から雌は分娩後3日までの40-50日間、雄は剖検までの42日間強制経口投与した(12匹/性/群)。【結果】28日間反復投与試験において、雌雄ともに死亡例はなく、体重、摂餌量への影響は認められなかった。肝臓では、雄の300 mg/kg/day、雌の60 mg/kg/day以上で臓器重量が用量依存的に増加し、雄の60及び雌の12 mg/kg/day以上で軽微~中等度の門脈周囲性肝細胞腫大がほぼ全例に認められ、重篤度が用量依存的であった。雌雄の300 mg/kg/dayでは血中γ-GTPが上昇した。腎臓では、雌雄の300 mg/kg/dayで臓器重量の増加、全例に軽微な近位尿細管腫大、血中尿素窒素及び無機リンの上昇が認められた。膵臓では、雄の60及び雌の12 mg/kg/day以上で軽微~軽度のチモーゲン顆粒減少がほぼ全例に認められ、重篤度が用量依存的であったが、より高用量で実施した予備試験では影響が認められなかった。全ての影響について回復性が認められた。簡易生殖毒性試験では、分娩率の低下傾向がみられたが統計学的有意差はなかった。60 mg/kg/dayでは雄の肝重量増加が認められた。【考察】肝臓への影響は再現性があり、本物質の標的臓器と考えられた。300 mg/kg/dayでみられた腎臓での変化も本物質による影響と考えられた。2試験を総合的に評価した結果、本物質のNOAELは2.4 mg/kg/dayであった。一般毒性が生じない用量で生殖発生毒性は認められなかった。
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© 2016 日本毒性学会
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