日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-238
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一般演題 ポスター
アセトアミノフェンの新規代謝経路:イオウ付加体の同定
*安孫子 ユミ石井 功鎌田 祥太郎土屋 幸弘渡邊 泰男居原 秀赤池 孝章熊谷 嘉人
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抄録
[目的] アセトアミノフェン(APAP)は、その毒性の原因であるN-アセチル-p-ベンゾキノンイミン(NAPQI)に生体内で代謝活性化される。親電子物質であるNAPQIは、グルタチオン(GSH)のシステイン残基(Cys)と結合し、解毒・排泄される。一方、我々は、シスタチオニンγ-リアーゼ (CSE) がCysおよびGSHのパースルフィド/ポリスルフィド体(CysS-SH/CysS-SnHおよびGS-SH/GS-S-SG)のような活性イオウ分子(RSS)を生成する酵素であることを明らかにした。これらのRSSは、GSHよりもpKaが低いために反応性が高く、NAPQIと容易に反応してイオウ付加体を形成すると予想される。本研究では、APAP肝毒性に対するCSEの細胞保護効果およびNAPQIとRSSとの反応生成物の同定を行った。
[方法] APAPの投与:C57BL/6Jマウスに150 mg/kg APAPを腹腔内投与し、4時間後に血液、肝および尿を採取した。毒性の評価:ALT、ASTおよびLDH値の測定、およびTUNEL染色を行った。APAPイオウ付加体の検出:アセトニトリルで処理した各生体試料、およびNAPQIとCSE精製酵素反応液もしくは合成GS-S-SGを還元して生成したGS-SHとそれぞれ反応させた試料をUPLC/MS/MSで解析した。
[結果・考察] APAPによる肝毒性は、野生型と比較してCSE欠損マウスにおいて顕著にみられたことから、CSEはAPAPの毒性軽減に重要であると示唆された。肝、血清および尿中からAPAP-S-S-Cys結合体、尿中からAPAP-S-SG結合体が同定された。これを支持するように、CysS-SH/CysS-SnHもしくはGS-SHと NAPQIを反応させると、生体試料で認められたAPAPイオウ付加体がそれぞれ生成した。本研究により、RSSはNAPQIに対する解毒因子の一つであることが示唆された。
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© 2016 日本毒性学会
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