日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-59
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一般演題 ポスター
ラット薬剤性網膜毒性モデルにおける血中microRNAの変動
*柿内 太武田 賢和太田 恵津子藤川 康浩中野 今日子細川 暁
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抄録
眼毒性はQOLを大きく損なう有害事象であり,特に網膜細胞の壊死性病変の回復性は無いことから,医薬品開発において非臨床試験の段階で早期に検出・評価することが極めて重要である。非臨床試験において,網膜毒性を検出する方法として,網膜電位測定(ERG)が用いられるが,前日からの暗順応や麻酔が必要であるなど,煩雑である上に,限局性の網膜障害の場合には変化を捉えられないことから,より簡便且つ鋭敏な毒性検出法の確立が求められる。昨年の本学会で,我々は視細胞のアポトーシスを誘導するN-メチル-N-ニトロソ尿素(MNU)網膜障害モデルを用い,血清中miR-96-5p, -124-3p, -183-5pが,ERGと同程度の感度で上昇することを報告した。本研究では,これら3つを含めた血清中microRNA(miRNA)の網膜毒性マーカーとしての有用性を確認するため,別のタイプの網膜障害モデルにおける血清中の変動を検討した。
網膜色素上皮細胞に酸化ストレスを誘導するヨウ素酸ナトリウム(NaIO3) 10, 30 mg/kgをF344ラット(雄,8週齢)に単回静脈内投与し,投与後1週間まで,経時的にERG,眼科学的検査ならびに眼球の病理組織学的検査を実施した。また,投与後6,24,及び48時間,1週間に採取した血清からmiRNAを抽出し,定量的RT-PCR法で測定した。その結果,30 mg/kg群では投与後24時間にERG波形の減弱と網膜色素上皮細胞の変性/壊死がみられた。投与後1週間ではERG波形の消失と色素上皮細胞の変性・壊死に伴う視細胞層の配列異常がみられたが,明らかな視細胞の壊死・消失は認められなかった。10 mg/kg群では,いずれの検査においても変化がみられなかった。血清中miRNAの発現解析では,30 mg/kgまでいずれのmiRNAも有意な変動を示さなかった。以上の結果から,血清中miR-96-5p, -124-3p, -183-5pは,視細胞の細胞死時に特異的に上昇することが示唆された。
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© 2016 日本毒性学会
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