日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-79
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優秀研究発表 ポスター
DMA(V)誘導肝臓DNA hypomethylationの機序解明
*山岸 由和大西 悠岩佐 万実草苅 啓横内 敬司古川 賢杉山 晶彦
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抄録
【目的】ジメチルアルシン酸(DMA(V))はヒ素の動物における主要代謝物で、ラット肝臓中にてDNA hypomethylationを誘発する1)。本変化は発がんに重要な役割を担っていると報告されており、その機序を解明することはヒ素の発がん性を理解する上で重要である。本研究ではラット肝臓におけるDMA(V)によるDNA hypomethylationの機序を明らかにするため、①:LC-ICP-MS及びLC-MS(orbitrap)を用いた肝臓中DMA(V)由来代謝物分析、②:UV-HPLCによるSAM(S-アデノシルメチオニン)定量分析、③:DNA中dC、5Me-dC及び5hMe-dC定量分析を実施した。【材料及び方法】試験には7週齢Wistar Hannoverラット雄16匹を供試した。DMA(V)を生理食塩水に溶解し、0、30、100、300 mg/kgの用量にて24時間ごとに3日間腹腔内投与した。最終投与3時間後に剖検し、肝臓を摘出した。重量測定した。その後、各種緩衝液にてDMA(V)由来代謝物、SAM及びDNAを抽出・前処理を行い、①~③の分析に供した。【結果】試験期間を通して死亡、臨床症状及び体重に異常は認められなかった。①:DMA(V)及びTMAO(V)が検出されたが、その他の代謝物はほとんど検出されなかった。②:SAMは30mg/kgにて最大となり、用量依存的に減少した。③:DNA中5hMe-dC存在率は用量依存的に増加し、その変化は0 mg/kg群(100%)に比べて最大24%の増加であった。【結論】DMA(V)はSAMを誘導するものの、投与量が増加に伴い減少することが明らかとなった。これはSAMがDMA(V)をTMAO(V)へ代謝するため誘導されるものの、高用量ではそれ以上に消費されたものと考えられた。また、DNA中5hMe-dC存在率が顕著に増加したことから、DNAの脱メチル機構が活性化されていると考えられた。以上より、DMA(V)によるラット肝臓中DNA hypomethylation機序は肝臓中SAM量の変化及び消費並びにDNAの脱メチル機構が密接に関わっていると考えられた。
1) 第42回日本毒性学会 P-24 「ジメチルアルシン酸のラット臓器DNAに対する作用」
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© 2016 日本毒性学会
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