日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-80
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優秀研究発表 ポスター
ラット肝類洞閉塞症候群モデルにおける診断バイオマーカーとしてのmiRNAの探索
*竹内 理貴織田 進吾常山 幸一横井 毅
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抄録
 肝類洞閉塞症候群 (Sinusoidal Obstruction Syndrome: SOS) はピロリジジンアルカロイド類の過剰摂取、造血幹細胞移植における放射線療法及び癌化学療法によって引き起こされる循環障害性肝障害である。肝中心静脈障害や肝類洞内皮細胞障害を発端として、血管の狭小化、閉塞から肝細胞障害、肝線維化へと重篤化する進行性の疾患であり、重症化すると極めて予後不良であることから早期診断が求められる。しかし、臨床において特異的な診断バイオマーカーは存在せず、SOSの発症を早期に予測、診断することが困難である。本研究ではSOS動物モデルを用いて低侵襲性バイオマーカーとして着目されている血中miRNAが発症予測・早期診断マーカーとなり得るか明らかにすることを目的とした。
 6週齢の雄性SDラットにモノクロタリン (160 mg/kg, gavage) を単回投与し、投与後0, 0.25, 0.5, 1, 2, 4, 7日に肝臓及び血清を採取した。肝臓を用いてHematoxylin & Eosin染色、AZAN染色による病理診断を行い、肝類洞内皮細胞マーカーであるSE-1に対する免疫染色を実施した。血清からtotal RNAを抽出し、miRNAの網羅的発現変動を解析した。選択したmiRNAについてはreal-time RT-PCRによる個別定量を行った。
モノクロタリン投与後0.5日より類洞内皮細胞障害を認め、投与後2日には中心静脈周囲の肝細胞障害及びうっ血が認められ、投与後2日を軽度SOSと診断した。さらに投与後4~7日にかけて血管の狭窄、線維化へと進行するSOSの病態モデルを確立した。網羅的血清miRNAプロファイルの解析より、投与後2日のSOS発症よりも早期に発現上昇するmiRNA及び投与後2~7日にかけて経時的に発現上昇するmiRNAを同定した。以上、血中miRNAがSOSの発症予測・早期診断バイオマーカーとなり得る可能性を示した。
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© 2016 日本毒性学会
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