日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-78
会議情報

優秀研究発表 ポスター
ラットへのthioacetamide投与によりDNA過メチル化と発現の下方制御を受けるユビキチン結合酵素UBE2E2及びserine/threonineタンパクキナーゼSLKの肝臓増殖性病変における発現挙動
*水上 さやか八舟 宏典渡邉 洋祐長谷川 也須子吉田 敏則渋谷 淳
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【背景及び目的】プロモーター領域の過メチル化は下流遺伝子の発現を抑制することが知られている。メチル化は安定した化学修飾であり、細胞分裂後の娘細胞に継承されることから、発がん物質投与により標的細胞にメチル化異常を介した遺伝子発現の下方制御を示す遺伝子は、不可逆的な発がん過程の進行に寄与する可能性がある。我々は、肝発がん過程の初期からTmem70 等の遺伝子の過メチル化を見出してきており、本研究では新たに二つの遺伝子について、発がん過程での発現特性を検討したので報告する。【方法】ラットにthioacetamide(TAA)を28日間、400 ppmの割合で混餌投与し、得られた肝組織を用いてCpG island microarray解析を実施して過メチル化遺伝子を同定した。次いで、real-time RT-PCR法により発現の下方制御を示した遺伝子につき、methylation-specific PCR法によるメチル化の検証を行った。解析の結果、免疫染色可能な分子を選別し、発がんへの関与を検討するため、ラット中期肝発がん性試験法に従って様々な発がん物質による発がん促進によって得られた増殖性病変での免疫染色による発現挙動を検討した。【結果及び考察】TAAの28日間投与により、E2ユビキチン結合酵素をコードする Ube2e2 及びSTE20様serine/threonineタンパクキナーゼをコードするSlkのプロモーター領域における過メチル化と転写産物発現量の減少を認めた。さらに、発がん促進によって誘発されたGSTP陽性変異肝細胞巣に一致して、UBE2E2及びSLKは陰性巣を形成していた。UBE2E2は検索した全ての発がん物質で陰性巣の数が増加したが、SLKはTAA及びpiperonyl butoxideでのみ陰性巣の増数を認めた。以上より、SLKとは異なり、UBE2E2は発がん過程早期から発現が喪失する新たな癌抑制遺伝子である可能性が示唆された。
著者関連情報
© 2016 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top