日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-81
会議情報

優秀研究発表 ポスター
表皮角化細胞へのアレルゲン暴露によるThymic stromal lymphopoietinの誘導:即時型アレルギーバイオマーカーとしての可能性
*黒田 康嵩行 卓男高橋 豊坂口 斉板垣 宏
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
<背景・目的>経皮感作による即時型アレルギー発症において皮膚でのThymic stromal lymphopoietin (TSLP)の関与が報告されている。これまで我々は卵白アルブミン(OVA)等を培養正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)に暴露するとTSLPが誘導されることを明らかにした。本研究では被験物質の拡充及びTSLPの適切なエンドポイントの検討を行った。 <方法>小麦グルテンやOVA等のアレルゲンをNHEKに暴露し、TSLPのmRNA、タンパク質発現変化をリアルタイムPCR、ELISA、Western blottingによって解析した。さらにアレルギー環境を模したサイトカイン(IL-4、IL-13、TNF-α)刺激の影響、TSLPの2つのisoform(Long型、Short型)のmRNA発現量を解析した。 <結果・考察>mRNAレベルのTSLP発現解析において、経皮即時型アレルギーの原因となる小麦グルテン、OVA等の暴露はLong型、Short型のmRNAを増加させたが、ヒト血清アルブミンはLong型を増加させなかった。また小麦グルテンを酸加水分解させると、アレルギー反応を増強させる0.5時間加水分解物では有意にLong型、Short型を増加させた。一方、分子量が小さくなりアレルギー反応が減弱する48時間加水分解物ではLong型の発現上昇は認められなかった。さらにタンパク質レベルのTSLP発現解析において、OVAはTSLPを放出させた。さらにサイトカイン刺激によってOVAはTSLP産生を増加させ、小麦グルテンもTSLPを放出させた。一方、ヒト血清アルブミンや48時間酸加水分解小麦グルテン暴露ではサイトカイン刺激下においてもTSLPを放出しなかった。以上より、ヒト表皮角化細胞においてアレルゲンはLong-TSLP mRNA、TSLPタンパク質を誘導し、これらが経皮即時型アレルギー性評価における適切なエンドポイントの一つとなることが示された。
著者関連情報
© 2016 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top