日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: S17-2
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シンポジウム17 再生医療・細胞治療の品質・安全性評価のあり方 -患者様のリスク最小化に向けたアプローチ-
iPS/ES細胞を用いた再生医療研究 -安全性評価技術の現状と課題-
*孫谷 弘明
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抄録
近年、iPS/ES細胞を用いた細胞加工製品の研究開発は多くの大学や企業で盛んに行われ、臨床応用に向けた実用化が大きく期待されている。しかし、再生医療等製品の非臨床安全性試験は医薬品・医療機器に比べ蓄積データも少なく、関連ガイドライン・ガイダンスを整備するには至っていないのが現状である。
iPS/ES細胞由来細胞製剤を含む細胞加工製品の非臨床安全性試験は、全身・局所に対する影響評価及び生命維持に係る重要な器官・組織への影響評価を含む一般毒性試験と細胞製剤の目的外の変化の有無(形質転換、腫瘍化)を評価する造腫瘍性試験が実施すべき必要最低限の試験としてPMDAより提案されている。
動物種の選択、投与量、試験期間の設定は開発する製品の治療目的や細胞特性によってケースバイケースで対応することになるが、その選択の幅は非常に大きいように思える。例えば動物種は通常、異種細胞に対する免疫反応が小さい免疫不全動物を用いるが、マウスだけでも種類が豊富(ヌード、SCID、NOD、NOG等)である。また、マウスでは投与・移植が技術的に困難な場合はヌードラットを用いることになるが、免疫不全の程度でいうと軽度に分類される。この場合、免疫不全度の差が試験結果に影響を与える可能性が考えられるため、十分な予備検討が必要となる。
また、細胞製剤の品質も試験結果を左右する重要な要因となる。不純物として混入した多能性幹細胞による腫瘍化は原因が明確であるが、細胞製剤の主要細胞自身が腫瘍化した場合は、元々その細胞が持つ性質によるものなのか、それとも製造過程で発生してしまった造腫瘍能を獲得させる可能性を否定できないようなリスク(例えば核型異常、遺伝子変異等)によるものなのかを可能な限り区別する必要がある。
本シンポジウムでは、細胞加工製品の非臨床試験を実施する上で見出された問題点や課題について実例を提示しながら紹介し議論したい。
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© 2016 日本毒性学会
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