日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: SS-5
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日本毒性学会35周年記念特別企画 学会の生い立ちと未来展望
社会に浸透した毒性学をめざして
*菅野 純
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抄録
毒性学は、医療現場で起きている事態から公衆衛生学・疫学の知見までを理解し、国民の安全と安心の確保に必要な情報或いは研究が何処にあるか、無ければどのように研究を進めるべきかを見出す立場にある。生活環境に投入される続ける新規化学物質の物性情報をそれらが普及する前に把握して、毒性を予見することも必要であり、製造者側との密な交流も毒性学運用の重要な要素である。米国ではナノマテリアル製品開発に際して、適切に検討された毒性情報が添付されない限り流通を認めないというWTO/TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)に照らしての防衛的な方針が打ち出されたという。不採算部門であった毒性学が販促の必須アイテムとなったという話である。また、製造側と毒性側の直接的な交流が製造者と消費者のWin-Win situationの醸成に必須となりつつある。国民の安全・安心確保、製薬・工業界の生産性向上、米国流に言えば広義の国防に資するための道具立てとして、現在、病理学、診断学、分子生物学からシステム工学まで幅広い学問が用意されており、それを如何に有機的に活用するかに毒性学の社会浸透度が依存する時代が始まっていると考える。
この10月より、日本毒性学会の強力な後ろ盾をいただいて拝命するIUTOX会長の立場から眺めると、状況は、しかしながら、若干異なる。IUTOX加盟63か国の大半は開発途上国であり、公衆衛生としての「毒性評価の如何」が興味の中心である。そこでは、「毒性」「リスク」「ハザード」という語彙の浸透が課題であると言われる。盟友であるASIATOXメンバーとともに、先端的な面と、支援的な面を内外に示しつつ毒性学を展開してゆく状況に現在の日本毒性学会が置かれていると考えられる。さらなるご支援をお願いするものである。
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© 2016 日本毒性学会
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