抄録
日本毒性学会が誕生して35年となっている。ここに至るまでの経過は、これまで本学会を牽引されてきた重鎮の先生方が話題提供されるので、若い方々もその流れを理解できるであろう。欧米においては、有機塩素系化合物による生態系汚染やサリドマイドによる催奇形性など大きな社会問題の発生とその解決及び防止を目指して、毒性学会設立につながっている。日本毒性学会が成立する以前の日本においてもまた、医薬品や生活環境中の種々の化学物質による深刻な健康被害や環境汚染が進行し、これらの問題の解決のための研究や方策に取り組んできた成果である。毒性学はいまや、社会の安全・安全のための情報提供のための最も重要な立ち位置にあり、新しい科学・技術を取り入れながら、化学物質による生命や生活環境の保全に貢献している。本学会では、機関誌としてJ.Toxocol. Sci. が中心的役割を果たしてきているが、ここに至るまでには、学会関係者、理事会、編集委員長を中心に編集委員とレビュー担当者の並々ならぬ努力の成果である。当初は、毒性試験研究結果の掲載、日本語と英語混在、海外からの投稿の問題など、種々のことがあった。現在のように、IFもつき、投稿論文も増えている状況までJ. Toxicol Sci.誌を高めて頂いたのは東北大・薬 永沼 章先生のご尽力の賜物である。この席で心から御礼を申し上げる。J. Toxicol Sci.誌は引き続き会員だけでなく、日本とアジアの毒性学研究の指導的研究誌としてさらに展開することは間違いない。本学会は35周年を迎えたが、これを通過点として、若い世代が本学会を益々の発展させていくことを期待する。