日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-1
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一般演題 口演
ラットへのオクラトキシンA反復投与による腎臓におけるDNA修復遺伝子Rad51c及びRNA翻訳制御遺伝子Rbm38のエピゲノム遺伝子発現制御の変化
*長谷川 也須子水上 さやか大塚(出田) まき五十嵐 勝秀吉田 敏則渋谷 淳
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抄録
【背景及び目的】オクラトキシンA(OTA)は主にAspergillus属のカビが産生するマイコトキシンであり、生体への曝露により腎発がんの増加が懸念されている。我々は既に成熟ラットを用いたOTAの28日間強制経口投与によって腎臓髄質外帯外層(OSOM)において、尿細管上皮の巨大核形成と共に、細胞増殖亢進、アポトーシス及び細胞周期停止細胞の増加を見出している。本研究では、OTAの反復投与による腎臓でのエピゲノム遺伝子発現修飾の関与について検討した。【方法】ラットに2年間の投与により腎腫瘍を誘発する0.21 mg/kg体重の用量でOTAを28ないし90日間、強制経口投与した。得られた腎臓のOSOMからMBD2-seq解析により遺伝子プロモーター領域の過メチル化を示した遺伝子を選別後、リアルタイムRT-PCR法により遺伝子発現の下方制御を受ける遺伝子を選出し、メチル化特異的PCR及びパイロシークエンス法により過メチル化の検証解析を実施した。更に、遺伝子産物のOSOMにおける発現分布を免疫組織化学的に検討した。【結果】MBD2-seq解析により10遺伝子を過メチル化遺伝子として見出し、このうち4遺伝子でmRNAの発現減少を確認した。更にメチル化特異的PCR及びパイロシークエンス法により、OTA投与群でRad51cRbm38でプロモーター領域の過メチル化を確認した。免疫組織化学的解析により90日間OTA投与群のOSOMでは巨大核を有する尿細管上皮の一部でRBM38の発現減少が観察された。【考察】OTAのラットへの反復投与により、腎臓のOSOMでDNA修復に関与するRad51cとがん抑制遺伝子であるTp53の発現調節を担うRbm38の過メチル化と下方制御を認めたことから、OTAによる腎発がん過程の早期にエピゲノム遺伝子発現制御を介したDNA修復やがん抑制遺伝子の発現調節変化を生じることが示唆された。
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© 2017 日本毒性学会
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